一般家庭を対象に、コスト対性能比が高い蓄電池システムの開発が進んでいる。火付け役になったのがNEC。分電盤につないで既設のコンセントが使える系統連携が可能な蓄電池システムを2011年7月に発表し、「電池容量6kWhで100万円以下」とした。2012年から本格販売する計画だ。

 この価格設定は、電池容量当たりで従来製品の4分の1~5分の1に相当する。NECをターゲットに、他社からも価格競争力のある製品が相次いで製品化されると見られる。政府からの補助金が実施され、電池コストの低減がさらに進めば、テクノアソシエーツがこのほどまとめたレポート『定置用蓄電池はどこまで使われるか』において、定置用蓄電池の急速普及の条件の一つに挙げた「6kWh50万円」の実現が、2014年頃には見えてくる(図1)。

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図1 定置用蓄電池の普及に向けた10の仮説(『定置用蓄電池はどこまで使われるか』、テクノアソシエーツより) 3

非常時だけでなく常時使用で価格性能比を高める

 電力を貯蔵する定置用蓄電池システムに対するニーズは、2011年3月の東日本大震災によって大きく変化した。特に、事業所(工場)においては、蓄電池システムへのニーズが高まった。国内の電池関連メーカーには、「工場を止めたくない。いくらでも払うから電池を提供してほしい」という要望が殺到した。

 これは計画停電に伴う一過性の現象という観測もあったが、実際は違う。計画停電がなくなった後でも「蓄電池に対するニーズは継続して増えている」(日立工機など複数の蓄電池システム・メーカー)という。

 ただし、経済性を全く無視できるようになったわけではない。“安心感”が価格の許容度を広げる効果はあるものの、初期投資の少しでも回収できないと、対象は一部の富裕層に限られてしまう。例えば、震災直後には、電源を調達したいという消費者行動から、コンビニエンス・ストアなどの店頭から乾電池が姿を消したが、一般家庭に向けて蓄電池がどんどん売れているというわけではない。

 初期投資回収の答えの一つに、蓄電池システムを常時利用することによる電力のピークシフトがある。常時使用してシステムの稼働率を上げることで投資回収を早めるわけだ。しかも、電力のピークシフトは電力料金の節約につながる。夜間の電力需要が少ない時間に蓄電池に充電し、日中の需要ピーク時に放電すれば、昼夜の料金の価格差がプラスとなる。使用する電力のピークを抑えれば、契約を変更して基本料金を下げることもできる。