三つの連携で高付加価値化を図る

 将来的に蓄電池システムの普及をさらに拡大するには、ピークシフトだけでは商品性に欠ける。次のステップとして、太陽光発電の“創エネ”、家電制御の“省エネ”、蓄電池の“蓄エネ”の三つを連携させて付加価値を高める必要がある。

 この中核となるのが太陽光発電、家電、蓄電池などの構成要素を統合して管理するHEMS(Home Energy Management System)やBEMS(Building Energy Management System)である。HEMS/BEMSが、太陽電池の発電状況や家電の電力消費状況に応じてエネルギーを有効活用できるよう、時間ごとにきめ細かく制御する。

 例えば、日照量によって太陽電池の発電量が変化した場合に家電の電力使用量を抑えたり、天候の変化を予測し前もって蓄電池に貯めたりするといったことが自動で行える。

 震災前、蓄電池システムは太陽光発電システムと同様に既存の設備に追加する一つに過ぎなかった。しかし、太陽光発電システムは国や自治体からの補助金、余剰電力の固定価格買い取りなど、導入を支援する制度がいくつもある。

 一方、蓄電池システムは100万円単位の導入費用が必要だが、太陽光発電システムのような支援制度はなかった。このため、蓄電池システムは「経済的にとても手が出ない」という見方がほとんどだった。

 それが震災後、電力なしでは社会全体が成り立たないことを人々が体験し、電力会社が計画停電を実施したことで「電力が途絶えることはない」という常識が覆された。その後も「また予測できない事態が起きたら電力が止まるのではないか」という不安は払拭されていない。

 さらに、電力供給の要だった原子力発電に対する信頼が揺らぎ、電力の安定供給が危うくなっている。電力を貯蔵することで有事に備える“安心感”を得ることを優先し、人々は蓄電池システムを求めるようになる。

自動車メーカーが市場を牽引

 それでも、より早い市場拡大を期待すれば、蓄電池の価格を下げる必要がある。冒頭のNECが蓄電池システムの価格リーダーになり得たのは、自動車用電池の製造を手がけていることが大きい。NECがパートナとして組む日産自動車は、2015年までには年間50万台の規模で電気自動車(EV)用電池の量産体性を敷く。

 その電極生産の大半をNECグループが担う。EV用電池で培った電池・電極製造のインフラやノウハウを、定置用蓄電池にも生かすことで、高い安全性と低コスト化の両立を図る。同様に、伊藤忠エネクスも米EnerDel社の自動車用電池を活用した蓄電池システムの販売で攻勢をかける。

 自動車メーカー自身も家庭の電力貯蔵市場に商機を見いだしている。トヨタ自動車は、「エスティマ」のHEVモデルが持つ電力供給機能が東日本大震災の被災地で活用されたのを機に、その機能をプリウスなど他のHEVにも拡大させる方針である。

 日産自動車や三菱自動車も2011年度内に住宅への電力供給機能を持つEVを販売することを明らかにしている。以前は自動車メーカー内部で「自動車の駆動用途以外に電池を使うべきではない」という反対意見も強かったという。だが、震災以降はその勢力が影を潜めているようだ。