いきなりですが、問題です。

 次のイラストは、ある特許の明細書に掲載された図。特許になったのは、107年前の1904年11月15日です。日本では、日露戦争の真っ只中。急ピッチで西欧列強に追い付こうとしていた『坂の上の雲』の時代です。さて、何の特許か、誰の特許か、分かるでしょうか。

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 そうです。発明者は、King C. Gillette氏。かみそりメーカーのGillette社の創業者で、替え刃式ひげそりを考案した人物として知られています。

 発明の名称は「Razor」。いわゆる、安全かみそりの特許ですね。100年を経て、今も基本的な形をほとんど変えずに洗面所に存在する発明です。

 替え刃式の発明は、製品を売った後に、交換部品の売り上げで継続的な収益を得るビジネスモデルにつながりました。100年前に生まれた新技術の発想が、プリンターのインク・カートリッジやインターネット・ビジネスなど、今でもエレクトロニクス業界に大きな影響を与えているのはご存じの通りです。

 今回、Gillette氏のように世界的に有名な発明家の特許明細書を幾つか入手しました。すべて米国特許で、日本弁理士会の会長を務めた谷・阿部特許事務所の代表社員 谷義一弁理士が収集したものです。

 個人的に古い特許明細書が大好きです。文書作成が機械化された近年の特許とは異なる、当時の雰囲気や時代の風が垣間見えるからです。古伊万里の器を使ったり、古い絵画を鑑賞したりするのと同じように、見る者に語りかけてくるような気がします。何より明細書のイラストに味があって、現代の明細書のものよりも美しい。知恵を絞って一獲千金を目指す当時の発明家の熱が、長い時を経て今にも伝わってきそうです。

 では、少し難易度を上げて、次のページのイラストはどうでしょうか。時代は、Gillette氏の発明からさらに16年ほど遡ります。1888年9月に特許になった発明です。