(3)の解決案の創出とは、現状を到達目標に引き上げるための方策を考えることです。問題を解決しなければならないと思って悩んでいる時に、何かのきっかけがヒントになり、一つの解決案だけが思い浮かぶことがあります。そうすると、解決案はそれしかないように思い込んで、すぐに実行しようとします。しかし、それはあくまで一つの案であって、もっと良い策があるかも分かりません。

 そこで、もっと良い解決案があるのではないかと考える必要があります。そのために、視座力・視点力・価値観力を活用します。思いついた一つの案をヒントにして、それが本当に最良かどうかを、到達目標の価値観に照らし合わせてみます。実は到達目標にも価値観が背景にあります。例えば、自社の製品に同じトラブルが多発し、それを解決しなければならない問題で、後始末のためのコスト負担をできる限り少なくすることを優先するのか、会社の信用を取り戻すために一時的なコストの増大をやむを得ないと考えるのか、コスト以外のものを取り上げるのかで、解決案が変わってきます。

 (4)の解決案の策定とは、候補に挙がった複数個の解決案の中から、最良な解決案や最適と考える解決案を策定することです。そのためには、それらの案の利点(メリット)と欠点(デメリット)を明らかにし、さらに案採用の可能性を客観的に評価する必要があります。評価においては、どの立場(視座)から、何に焦点を当てるのか(視点)、評価項目を何にするのか(視点)を明確にしなければなりません。

 (5)の解決策の実行とは、まさしく最良の策であるとか、最適な策であるかと考えて選択した解決策を実行することです。解決策にも一人で実施できる場合や、プロジェクト・チームを組まなければならない場合、全社挙げて時間をかけて解決していく場合などがあります。

 ごく常識的な例では、プロジェクト・チームを編成して解決する場合、プロジェクト管理が必要になります。プロジェクト管理のポイントとなるものは、視点です。中でも大切なものは、Q(品質)・C(コスト)・C(納期)です。つまり、Q・C・Dの三つの視点のセットで解決策の実行が管理されます。

 (6)の解決過程は、文字通り解決に向けた作業です。計画通りに進まず、新たな問題が発生することがあります。この作業においては、視座が大切です。常識的には、設計者、企画担当者、実施者、監督や実施責任者、プロジェクトの進捗状況の管理者、会計責任者、報告者、記録者など、いろいろな視座の人が関わります。

 (7)の解決の結果の確認は、解決事態が本当に出現しているのかどうか、思わぬ事態が起こっていないかどうか、副産物がないかどうかを確認することです。確認には、やはり視点の設定が重要です。

 (8)の過程全体の評価とは、解決過程と、問題解決が終わって実行した解決結果が、価値観に照らして良かったのか良くなかったのかを評価することです。その結果が、誰にとって、どんな項目で、良かったのか良くなかったのかを評価することになるのです。つまり、「誰にとって」は具体的な視座であり、「どんな項目で」はこだわりの視点であり、「良かったか良くなかったか」の判断は価値観という基準に対して行われているのです。さらに、次の同種の問題解決に向けて、解決結果と当初に設定した目標との対比、解決策の実行過程のチェックなどを行なうこともあります。

 このように問題解決でも、多くのステップで視座力・視点力・価値観力が発揮されます。この視座力・視点力・価値観力を意識することで、間違いなくあなたの問題解決力は向上するでしょう。

 問題解決力向上のための要点を列挙します。

・解決すべき問題をいろいろな視座や視点、価値観から多面的にかつ正確に把握する
・視座を考える場合、視座リストを用いる
・視点では、視点リストを用いる
・望ましさの背景にある価値観を確認する
・到達すべき目標は誰に(視座)とって、どんなこと(視点)で望ましいのか、を考える
・いろいろな視座や視点から解決案を多面的に検討する
・候補に挙がった解決策の中から最良の案を策定する場合、評価項目(視点)や評価手段(視点)を明確にする
・解決策の実行は、Q・C・Dの視点で解決過程を管理する
・解決過程および解決結果についても、視座、視点、価値観からの評価を行なう
・評価結果を次の問題解決に生かすよう努力する