(3)問題解決力の向上に向けて

 ここで取り上げる問題解決の「問題」とは、入学試験に出る「問題」などではありません。また、トラブルの問題だけでもありません。ここでの「問題」とは、こうありたいという目標の状態(desired state)と現実の状態(initial state)にギャップがあり、そのギャップを埋める手段(moves)や方法(method)が見つからない場合において、そのギャップをなくそうとする時、立ちはだかる壁を「問題」としています。そして、そのギャップを埋める行動を「問題解決行動」としています。

 仮にトラブルが発生している場合、現状はトラブルが起こっている状態であり、トラブルが解消した状態が目標の状態です。また、自分の力をレベルアップしたい時は、現在のレベルが現実の状態であり、想定レベルに達した状態が出現することが目標の状態です。したがって、学習や訓練をして目標のレベルにまで向上できた時、「問題を解決した」といえます。

 このような「問題」は身の回りにいくらでもあり、私たちは日常的に「問題解決」をしていると言えるのです。この問題解決においても、視座力・視点力・価値観力を発揮することで、効率よく問題解決できるようになり、良好な解決結果が得られるようになります。

 問題解決を解決するには、次の八つのステップが考えられます。

(1)問題の意識化(現状を変えなければならない何かがあることを意識する)
(2)問題の定式化(現状を認識し、解決できた状態(到達目標)を明確にする)
(3)解決案の創出(現状を到達目標に引き上げる方策を複数考える)
(4)解決案の策定(複数の解決案の中から、問題解決に最適と思う案を策定する)
(5)解決策の実行(選択した解決案を実行に移す)
(6)解決過程(解決策実行の過程で発生する問題に対応する)
(7)解決結果の確認(解決案を実行した結果が、目標に定めた「解決できた状態」であることを確認する)
(8)解決過程全体の評価(問題解決の過程と結果を評価する)

 これらのすべてのステップで、視座力・視点力・価値観力が特に有効に働きます。

 (1)の問題の意識化では、どんな立場から(どんな視座で)現状を見ているのか、どんな所に目を付けているのか、どんな価値を意識しているのか…によって、問題が意識化していきます。

 (2)の問題の定式化とは、現状と到達目標を明確にし、解決の方法がないことを確かめ、ギャップがあると考えることができたら、そのギャップを明らかにすることです。現状を明確にするにも、到達目標を明確にするにも、視座力・視点力・価値観力が有効に働きます。

 とかく現状把握は主観的になりやすいものです。主観的になると、本当に解決すべき問題が見えなくなります。実は、表面に表れている問題は、その問題を起こしている原因から生じた一つの結果なのです。また、その原因もさらに別の原因の結果である場合があります。問題を根本的に解決するには、大元の原因(真の原因)を突き止める必要があります。
 
 このように真の原因を突き止めるには、主観的な思いだけでは見落とす可能性があります。客観的に原因を突き止めるには、その問題事態の視点をできる限り多く持つことが重要です。その視点で、現状を整理するのです。また、その問題は誰にとって(視座)問題なのかも考える必要があります。当然のように思い込んでいる場合が多いのですが、改めて意識してみると意外な結果が出る場合があります。
 
 到達目標の設定についても、誰のために(視座)解決すべきなのか、何が(視点)どのような状態になると解決したと言えるのかを考えることで、ブレのない到達目標が設定できます。さらに、目標達成はどんな価値をベースにしているのかを考えなければなりません。それは、価値観の設定との照らし合わせが求められます。