QUMA技術の中核開発メンバー3人は電子メールで打ち合わせ

図2○ビビアンの久池井淳取締役

 QUMA技術の原型は、ビビアンの久池井取締役(当時は代表取締役、図2)が東京工業大学大学院イノベーション・マネジメント科の学生だった時に構想を練ったものだ。

 2002年当時、電気通信大の学生だった久池井氏は、大手出版社の漫画制作に参加して3Dモーションキャプチャー装置のニーズがあると知った。そのころからQUMA技術の原型アイデアを温めていた。振り返ってみると、「2002年から2007年までは準備期間だった」という。

 2008年に、そのアイデアをある程度まとめ上げた久池井取締役は、3Dグラフィックスの専門家であるソフトイーサの伊藤氏を呼び出して、現在のQUMA技術になる原案を伝えた。この原案を聞いた伊藤氏は、その独創的なコンセプトに「開発に参加したいという魅力を感じ、協力する」と答えた。久池井氏は「QUMA技術を開発する資金が無かったために、未踏ユースで知り合った信頼できる仲間と開発チームを編成した」という。

 伊藤氏から協力するとの返事を聞いて、久池井氏はQUMA技術の基本設計を進め、事業計画なども考えた。ビビアンの共同経営者である栗川氏に、その後にQUMA技術となる原案・基本設計を伝え、栗川氏に「基盤技術の基本開発を依頼した」。(注、QUMA技術の詳細は未公表なので具体的な説明は控えた)。駆動部の回路設計や設計変更に強いMPU選定などを、久池井氏と栗川氏は共同作業で進めたようだ。また、低価格化を実現するために、既存部品をできるだけ採用するなどの工夫を加えた。

 QUMA技術の根幹部品は関節ユニットである。関節ユニットにはMPU(マイクロプロセッサー)をそれぞれ搭載してあり、関節の角度や回転角などを測るセンサーが組み込んである。関節ユニットはモジュール化してあり、ユニットを相互に接続すると「手」「肩」「腰」に相当すると自動認識するなど、拡張性に優れている。

 2009年9月に、QUMA技術を応用した3Dモーションキャプチャー装置の入力部分の人形プロトタイプ(自由度12)を作成した。続いて、今回公表した人型プロトタイプ(自由度48)は2010年3月に作成した(図3)。この人型プロトタイプのデザインは有名な“フィギュア”デザイナーである浅井真紀(あさいまさき)氏が担当した。「普通にお願いしても引き受けてくれない方ですが、開発構想を聞いて面白いとボランティアで引き受けてくれた」と、久池井氏は経緯を語る。

図3○人型プロトタイプ(自由度48)、有名デザイナーがボランティアで形状デザインを担当、ケーブルなどが外されている