トップ技術マネージャーの行動特性の特徴

 上で「プロジェクトの失敗を防止するには技術マネージャー層の行動特性が重要である」と述べたが、ならば具体的にどういったところが重要なのか。

 それを明らかにするため、成功プロジェクトに携わったトップ技術マネージャーの技術者力の特性に着目した。

 トップ技術マネージャーの技術者力は、5つの軸(技術者魂、コミュニケーション、チームワーク、リーダーシップ、モチベーション)いずれも一般的なマネージャーを上回っている。ここで「意識」「発揮」「結果」の3つ側面のうち、特に「発揮」「結果」に着目すると、トップ技術マネージャーは、コミュニケーション・チームワーク・リーダーシップで能力を発揮し、結果につなげている事が見て取れる(下図6参照)。

図6:トップマネージャーと一般マネージャの技術者力・発揮/結果比較
図6:トップマネージャーと一般マネージャの技術者力・発揮/結果比較

 このうち、特に特徴のある2点(コミュニケーション・リーダーシップ)それぞれをさらに掘り下げる。

図7:一般マネージャーとトップマネージャーのコミュニケーション詳細比較
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 コミュニケーションの中では、特に「傾聴意識を持っているか」と「関係者との意思疎通を実践しているか」が最も大きな違いであり、自身の意見の伝達の差異は比較的小さい。(図7参照)

 マネージャーの役割の一つはメンバーのミッションを定義し、指示を与える事であるが、その前提として正しい状況把握が求められる。冒頭で述べたように、設計開発の最前線に立つ部下・メンバーは、詳細な技術知識はマネージャーを上回る事も多く、状況把握は困難を極める。ゆえに、マネージャーは自身の経験も補足材料として用いる事になり、それは必要な事であるのだが、かつてと今では前提が異なっている事に気づかない例も見受けられる。

 「私は良く現場を知っている」という上位マネージャーの”現場”は、”自分が担当者だったころの現場”であり、過去とは一部変化した”今現在の現場”ではない場合が散見される。