製品開発において、技術マネージャーの果たす役割が重要である事は論をまたないであろう。一人で完遂出来る製品ならばともかく、高度な専門作業の集合である現在の製品開発は、設計開発をハンドリングする技術マネージャーが機能しなくては成立しない。  

 技術マネージャーには、日々進歩する技術、変化する市場環境に対応するため、常に自らの知識と考え方を進化させていく”柔軟性”が求められる。また、新技術について自分以上の知識を持つ部下に対し、確かな論理性と理学・工学理論知識及び過去の経験から、矛盾点や問題点を指摘できる”経験による確かな軸”という、一見相反する要素も求められる。  

 技術マネージャーの重要性は認識しながらも、では求められる資質・能力とは何なのか。“名選手名監督ならず”と言うが、エンジニアと技術マネージャーはどうなのかは、なかなか明らかに出来ていないのが実態ではないだろうか。  

 今回は、製品開発における技術マネージャー層の特徴を分析し、未来のリーダーたちが何を意識すべきかを紐解いていきたい。

技術マネージャーにも求められる行動特性”技術者力”

 エンジニアとしての普遍的な能力とは何か?という問いに対し、イメージするのは何であろうか。

 理学・工学知識であったり、英語力であったり。あるいは、製図やシミュレーション・実験に必要なツールの操作能力であったり、現場での加工技術といった技能的能力を連想させる向きもあるだろう。

 実際のこうした知識は、少し分野が異なるだけで要求されるものが異なる。精密機器設計者と造船設計者がイメージする公差の単位が異なり、製造技術に対する知識も変化する。また、たとえば同じ自動車のエンジニアであっても、原動機エンジニアとシャシーエンジニアに要求される知識は大きく異なる。そうした背景から、「専門特化が進んだ今の設計開発領域において、エンジニアはつぶしが効かない」といった声も聞く。

 だが、実際には技術分野が変わっても引き続きエースとして活躍する方が多く実在する。また、そうしたエースに共通する”何か”も存在する。

 それを踏まえると、知識は設計開発業務で重要なものではあっても能力の本質ではないのではないか?と考えられる。

図1:人の能力の氷山
図1:人の能力の氷山

 上の図(図1参照)は、本連載の第2回でも触れた、人の能力を司る要素を海に浮かぶ氷山に存えモデル化したものである。