上述のように、中国で大量に発生したコピー製品は、歴史の流れから見ても当然と言える。問題は、コピーの度合い。つまり、どの程度、どのぐらいの時期、コピーを持続するかだ。

 コピーは中国の国民性ではないかと言わることも多い。実際にはそうではないことを簡単に証明できる。30年前、日本の電器製品は中国都市部の誰もがほしい人気商品だった。いまでも、品質が高いと思われる「日本製」「日本原装」(日本原産の意味)の製品を求める人々は少なくない。量販店のテレビ売り場では、「日本原装パネル」という意味の宣伝用語がいまでも見かけられる。日本に来た中国観光者が、わざわざ重い日本製の炊飯器を買って持ち帰るのはその原産による高品質を求めるためだ。

タイトル
写真:コピーされたiPhone

 コピー製品の氾濫は、あくまで経済条件の制限の元で生まれたニーズである。そのニーズにより低品質のコピー製品を繰り返す企業が全国的に出てきた。収入水準からみれば、コピー製品が一部の人に買われるのは当然のことだ。収入の増加に伴い、コピー製品は減る傾向になる。2年前、中国で大流行した「山寨携帯電話」は、最近では販売台数が減少する方向へ転じる一方、中東、インドなどではよく売れるようになっていることはその流れの証明である。

 iPhoneの外観とインタフェースをコピーした製品が発売されたが、アップルのアプリストアーにはつながらないし、操作の手触り感もよくない。しかし、iPhoneにはないこと、例えば、二つのSIMカードが使える機能がある。それにより、プライベート用と仕事用が両立でき、携帯を2台持つ必要がなくなる。コピーと同時に、新たな機能も追加されたのだ。

コピーによる中国の得と失

 コピーが蔓延していた中国は、コピーによって大きな利益を得たといわれていたが、実際にそうなのかは一概には言えない。

 例えば、海賊ソフトが氾濫していた1980年代と1990年代、パソコンは高価なものであると同時に、ソフトの値段もかなり高く、ほとんどの人は買えなかった。コピーのパソコンソフトが流行しなければ、短期間にパソコン産業の発達、パソコンの普及は不可能だった。同様に、コピーのパッケージメディア(CD、VCD、DVD、Blu-ray) は、プレーヤーやテレビ産業の拡大を支えた。元々海外ソフトメーカーへの収入は中国の海賊版メーカーとコピー利用者の利益へ転移した。

 しかし、ハード産業の隆盛の促進になると同時に、ソフト産業の成長の抑制にもなった。レノボなどの大手ITメーカーは世の中に知られているが、世界に知られるソフト企業はまだ一つもない。言い換えると、初期段階は、利益を上げるのは中国のハードメーカー、利益が少なくなるのは、ソフト関連の外国企業。全体的には雇用が増えて、利益の拡大に繋がるので、中国企業、中国経済にはプラスになる。しかし、ソフトのコピーが氾濫するので、正規版のソフトが売れなくなり、中国のソフト企業が成長できる良好なエコシステムが今でもできていない。また、コピー企業の乱立と同質の悪競争で、ハードの利益率も急速に下がりつつある。さらに、コピーに甘んじるならば、社会のイノベーション意識の低下になる。全体的に、長期的な視点からみれば、中国経済にとっては大きなマイナスになっただろう。

 そういった課題が既に強く意識され、中国政府は自主イノベーションに力を入れている。近年、知的財産を重視する動きが広がった。中国の国家知識産権局の統計によれば、今年の前半、特許出願申請数は67.6万件、昨年と比較した44.5%増加。ソフトウエアの著作権の登録の数も大幅に増加、今年の前半は4万件を突破、昨年より28%ほど増加した。その中に、クラウドなど世界の発展方向と同期したエリアの登録が大幅に増えたという。しかし、経済発展の格差も大きいことから、コピーが氾濫するという問題の解決は一朝一夕にはいかない。経済発展と収入増加に伴い、徐々に少なくなるだろう。