大震災から5カ月、原子力発電所問題は未だ収束していない。しかし、この問題を評価する時間はとれるようになってきたと思う。ここでは、更新問題を考えていきたい。

 問題の福島第1原発は1971年頃営業運転を開始したようである。報道によると、タービン建屋に設置していた非常用発電機が津波で破壊されたために冷却機能が失われたそうである。同2号機は1974年に営業運転を開始したそうであるが、これは大震災、津波に合っても冷却機能が失われなかった。失われなかったのは非常用発電機がより安全な原子炉建屋に設置されていたからである。

 以上のことから、第2号機で行われていた津波対策が3年前に運転開始した第1では放置されていたことになる。また後年、第2号機では冷却水を取り込む海水ポンプにも津波対策がされているが、第1号機では対策がされていなかった。

 以上のことから、津波の危険性を承知していながら、第1号機では更新を怠っていたといえる。その意味で、現在の第1号機による混乱は想定外ではなく、人災である。

 公開された中央制御室の写真を見るとアナログ計装と呼ばれているものである。第1号機に制御盤を設置したのは今から40年前。設置した当時の中堅技術者も現在は70歳代。設備の寿命が長すぎるようである。実際、第1号機は10年前に廃炉となる予定であった。減価償却が終わった炉を延命したから、原子炉の発電コストは新エネルギーに比べて低かった。言い換えれば。危険性を承知していながら対策を怠ったから。低コストだったといえる。

 実は1970年台に入るとDCS(Distributed Control System)と呼ばれるコンピュータ制御が一般的となる。ご承知のようにハードよりもソフトの寿命の方が短い。Windowsのパソコンは毎月のように更新されている。ソフトの不具合修正と新たに判明したセキュリティホールへの対策のためである。

 昨年、スタックスネットと呼ばれる制御系をターゲットとしたコンピュータウィルスが登場した。制御系も既知のセキュリティホールを放置すれば不作為による人災を招きかねない。もちろん、制御系だけではない。1960年台に開発されたCOBOL言語で書かれた会計システムやセキュリティホールが残ったUNIXで稼働している企業情報システムも同様である。

 24時間稼働しているから更新できない。コストをかけられないから更新できない。できない理由をあげる時ではない。時代の変化、人の変化に対応できる安全な設備を考案していかなければならない時だと思う。私は考える。もちろん、それでは足りない。皆様の英知も結集し、新たな機械の時代に対処していきたい。ご協力をお願いする。