図1●EVレンタカーとして沖縄で導入が進む日産自動車の「リーフ」 (撮影:テクノアソシエーツ)
図1●EVレンタカーとして沖縄で導入が進む日産自動車の「リーフ」 (撮影:テクノアソシエーツ)
[画像のクリックで拡大表示]
図2●沖縄県内における急速充電器の設置場所 (出典:Chademo協議会のWebサイト)
図2●沖縄県内における急速充電器の設置場所 (出典:Chademo協議会のWebサイト)
[画像のクリックで拡大表示]
図3●急速充電器を利用する際の認証に使用する「E-Quickカード」 (撮影:テクノアソシエーツ)
図3●急速充電器を利用する際の認証に使用する「E-Quickカード」 (撮影:テクノアソシエーツ)
[画像のクリックで拡大表示]
図4●急速充電器に併設されている認証用端末 (撮影:テクノアソシエーツ)
図4●急速充電器に併設されている認証用端末 (撮影:テクノアソシエーツ)
[画像のクリックで拡大表示]

 沖縄県で電気自動車(EV)レンタカーの導入が加速している。沖縄県には現在約2万5000台のレンタカーがあるが、その1%弱の220台に日産自動車のEV「リーフ」が導入されている(図1)。

 一般にレンタカーは長距離や長時間での利用が多いことから、航続距離が比較的短いEVの用途としてはまだ厳しいとされる。しかし、沖縄のように走行範囲が限定的な場合は、航続距離があまり問題にならない。充電インフラの整備もしやすい。こうした背景から、レンタカー会社や沖縄県内の関連企業が中心となって、EVレンタカー導入と充電インフラ整備のプロジェクトが立ち上がり、2011年春からのサービス開始にこぎ着けた。

 充電インフラとしては、約20基の急速充電器と、10数カ所に配置した200V普通充電器が現在稼働中である(図2)。基本的には、沖縄本島のどこに行っても充電不足となる“電欠”を起こすリスクが無いように急速充電器が設置されている。本土では、自動車ディーラーの販売店や自治体が急速充電器を設置し、利用料は無料か1回500円程度である。一方、沖縄ではEV向け充電サービスを提供する民間企業のエー・イー・シー(AEC)が急速充電器を設置し、会員制によるサービスをEVの利用者に提供している。

操作性、料金体系に課題

 沖縄ではEVレンタカーで先行した分、課題も見えてきた。

 まず認知度の低さである。2011年のゴールデンウイーク期間中はEVレンタカーの稼働率も100%だったが、「それ以外の期間ではまだあまり利用率が高くない」(リーフを100台導入したニッポンレンタカー沖縄社長の白石武博氏)という。

 レンタカーの利用者にとっても、EVはまだ一般的ではない。急速充電器の扱いには多少の慣れやコツが必要である。沖縄の場合、AECが発行するカードと専用端末によるユーザー認証作業も必要となる(図3、図4)。急速充電器と専用端末の両方のタッチパネルでの操作が必要なため、慣れないと店舗内に設置されている専用端末と、外の急速充電器との間を何度も行き来しなければならないようなことが起きてしまう。

 急速充電サービスの料金体系にも改善の余地がある。AECの充電サービスの場合、EVレンタカー貸し出しの際、充電サービス契約をAECと締結する必要がある。このときに、まず利用料として2000円が必要である。この後、急速充電器を利用するたびに1回当たり500円が課金され、EVの返却時に精算を行う仕組みだ。

 例えば、12時間借りて約300km走った場合、2回の急速充電が必要となり、合計で3000円、充電1回当たり1500円となる。現在、首都圏などで自治体に設置されている急速充電器は、無料で利用できる場合が多い。民間企業の急速充電器でも、まだ試験的な運用ということもありEVユーザーに無料で開放している場合が大半である。このような状況下では、沖縄の価格設定はかなり割高とみられても仕方がない。

収益性と利便性の両立を

 12時間で300kmの走行という条件を基に、一般的な小型車、ハイブリッド車とEVのレンタカーでコストを比較した(表1)。現時点では、ガソリンエンジンの小型車、ハイブリッド車、EVの順にコストが高いことが分かる。沖縄の観光でできるだけ安くクルマを借りたいというユーザーなら、ガソリンエンジンの小型車を借りるだろう。EVレンタカーの利用者は、環境意識の高い旅行者や富裕層に限られるということになる。

表1●小型車、ハイブリッド車と電気自動車のレンタカー利用料金の比較
自動車クラスガソリン・小型車ガソリン・ハイブリッド電気自動車
車種名デミオプリウスリーフ
レンタル料金(12時間)1425円4725円8400円
燃料代(円/L)1401400
充電代(円/回)00500
燃費(km/L)1520
燃費(円/km)9.3710
充電施設利用費(円)002000円
300km走行コスト2800円2100円3000円
コスト合計4225円6825円1万1400円
小型車とハイブリッド車はOTSレンタカーの最安価格。電気自動車はニッポンレンタカー沖縄のキャンペーン価格(作成:テクノアソシエーツ)

 長期的には、EVの特性をより生かしたビジネスモデルの構築が求められる。例えば、米国では米Ecotality社や米Coulomb Technologies社、米Better Place社が充電インフラ事業を行っている。これらの企業は充電サービスだけでなく、EVに搭載する蓄電池を電力系統網の周波数安定化や需要応答(デマンドレスポンス)にも使うことでEVの所有者が収益を得られるようにすることを事業の視野に入れている。沖縄でも同様に、事業者の収益性と利用者の利便性を両立させるモデルを構築することが望ましい。

 EVは静かで乗り心地が良い。走行時に排ガスや温暖化ガスを排出せず、太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電した電気で充電すれば、ゼロエミッション走行も可能だ。まだ走り始めたばかりで課題はあるものの、EV普及におけるモデル事業という意味で沖縄のEVレンタカーにかかる期待は大きい。

この記事は日本経済新聞電子版日経BPクリーンテック研究所のコラム「クリーンテック最前線」から転載したものです。