ソニーのテレビ事業は2005年3月期から7期連続の営業赤字である。2005年3月期からの累積赤字額は4400億円にも上る。長期間にわたる赤字計上から、金融市場からは「テレビ事業から撤退すべき」との議論さえ聞かれる。

テレビ事業:続けるべきかやめるべきか、その処方箋は

 筆者は、テレビ事業は継続するべきであるし、収益改善の可能性は十分にあると考えている。現在の、数量で業界3位という立場、および1兆1000億円以上の売上高を維持した上で、主要な問題点を解決できれば、少なくも好況時の黒字回復は十分に可能と考える。

 同時に、テレビ事業の収益問題は、テレビ事業を取り巻く環境の悪化や同社のテレビ事業運営の問題だけではなく、同社の全社的な問題にも深く関係していると考えている。以下、筆者の見解を詳述する。

テレビ事業の存在意義

 液晶テレビの前期売上高は1兆2000億円と、単一製品では最大の事業規模を誇る。旧エレクトロニクスとゲームの合計となる「Consumer Professional & Device(CP&D)+ Network Products & Service(NP&S)」の前期売上高5兆2000億円の2割強を占める。全社固定費(間接費)の吸収力が他製品と比べて大きい。

 また、液晶テレビは家庭内ネットワークの要の製品でもある。同社の3次元(3D)映像関連の事業戦略はテレビなくして構築することは難しい。ビデオ・オン・デマンド・サービス「Qriocity」も同様である。さらに、自社製品のテレビがあるのとないのとでは、量販店との関係も大きく変わってくる。テレビの有無によって、他の製品のSKU(stock keeping unit)獲得の容易さも大きく異なる。

 一般的に、FPDテレビ事業が儲からない理由として、(1)規模の経済に達していない(売上高)、(2)海外に十分な販路がない、(3)製品に特長や魅力がない、(4)コスト競争力がない(パネル購買力、設計力、工場の競争力、SG&A)、(5)オペレーション能力(需要予測、営業力、SCM)、などが挙げられる。より根源的な問題は上記(1)~(3)などである。日本のブランド会社の多くは特に、(1)と(2)で引っかかってしまう。一方、ソニーの場合、現時点では(1)~(3)に問題はない。問題は(4)と(5)であると、筆者は考える。