中国各紙の報道をまとめると、FOXCONNは自動化推進の部門として、「オートメーション化ロボット製品処」を、深セン市宝安区の富士康鴻観科学技術園に設立済みだという。

 ちなみにFOXCONNは、部品の組み換えを繰り返して超高速で変形するトランスフォーマーさながらに、人員や部署が絶えず増殖して組織が複雑に入り組み姿を変えることで有名なのだとか。この自動化の部署は、「SHZBG鴻超准製品事業群」に属しているとのことだ。

 同社はこの部署で、主にロボット用のコントローラや減速器、サーボモーター、センサーなど重要部品の設計・製造を行っているほか、各種ロボットの開発や内製を実施。LCD精密加工などの分野にまでロボットの導入範囲を拡大することを目指している。また、溶接、組立、運搬、吹き付け、検査、測定などの現場にもロボットの導入を計画しているという。

 さらに、生産ラインにおけるロボットの運行管理やメンテナンス担当者として、同社は2年前から中国各地でロボット関連のエンジニアを募集している。また、山西省にある傘下の「富士康晋城工業園オートメーション化ロボット事業処」では、現地の学校と提携してロボット関連エンジニアを育成。生産現場を模した訓練センターを設置し、人材育成に力を入れているという。

 ところで郭氏が掲げたロボット100万台という数字は、同社が中国で雇用する従業員とほぼ同じ数だ。中国メディアは当然、この問題を取り上げ、「ロボット100万台の導入計画が実現すれば、生産ラインで働く農民工(出稼ぎ労働者)の雇用はどうなるのか? 自動化の進行は、中国の雇用問題にとって極めて大きなプレッシャーになるのではないか」との懸念を示した。

 一方で、自動化の記事を伝えた中国や台湾メディアの中には、同社深セン工場で2011年上半期、12人の従業員が相次いで自殺を図った事件を引き合いに出し、「フォックスコンが、従業員を自殺しないロボットに変更」という、あからさまな見出しを立てたものもあった。

 そのような皮肉を込めた見方はともかくとして、同社が産業用ロボット導入による自動化を進める背景に、中国の人件費高騰があるのは間違いのないところだろう。

 FOXCONNのみならず、中国に進出する日系製造業にでも人件費の高進を背景にした自動化の波が確実に押し寄せている。