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“リスクを避けたい”社会に未来はあるか

古都の照明を変えた好奇心の人、島田順一氏(下)

加藤 幹之=Intellectual Ventures 上級副社長兼日本総代表
2011/09/12 07:00
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 私が前職の富士通に入社したのは1977年。その後の10年、日本はバブルに向かう経済成長の真っ只中だった。最初は繊維産業が、それに続いて自動車産業や電気通信産業が通商問題を抱えるようになった。国際競争力を持ち過ぎた結果、米国をはじめとする先進国と貿易摩擦を生じるようになったからだ。

島田順一氏。京都府立医科大学 教授
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 前回から紹介している京都府立医科大学 呼吸器外科教授の島田順一氏が故郷の大阪で少年時代を過ごしたのは、そんな時代である。今に比べればのんびりとした時代ではあったが、ベビーブームさながらの競争の激しい環境だったようである。

 第1次石油ショックの影響もあり、決して裕福ではない家庭に育った島田氏は、堺市立金岡中学校という公立中学に入学した。当時、近隣に新日本製鉄の製鉄所など、いわゆる臨海コンビナートができ、ベッドタウンとして住民が増え、生徒数が3000人を超える「世界一のマンモス校」とまで言われた学校である。この問題は、国会で取り上げられたこともあるようだ。

 「私が入学した年は、1学年に36クラスありましてね。私は1年27組。校舎が足りないので、プレハブの増築を重ねていました。体育のサッカーは、一つのグラウンドで3色のボールを使って6チームが同時に試合をするんです。今考えると、危ないですよね」

 小学校のころから理科が大好き。島田氏は理科係を担当する普通の少年だった。小学5年生で勉強に目覚め、国立大の付属中学を目指すが失敗。それで入学したのが、マンモス中学校だった。

技術への興味はステレオから

 「小学校の頃から医師を目指していたのですか」

 そう聞くと「全然考えていませんでした」という答えが返ってきた。「医師に興味を持ったのは、中学2年生くらいです。手塚治虫のマンガ『ブラック・ジャック』に憧れましてね」。

 少年の目には、ブラック・ジャックの天才的なメスさばきがかっこよく映った。だが、医師になるには、勉強しなければならない。それから順一少年は「一生の中で一番勉強した」。中学を卒業するころには、マンモス校でトップの成績になる。

 猛勉強の末に合格した大阪府立三国丘高校では、放送部に入った。学校の放送設備を使えば、好きだった音楽が聞き放題だったからだ。高校2年生のときに、親にステレオをプレゼントしてもらった。技術への興味が湧いたのはこの頃のようだ。コンポーネントをつなぐコードを換えると音質が良くなると知り、電車賃を惜しんで自転車で大阪の日本橋電気街に買いに出かけた。

 医師を本格的に志したのは高校3年の時。当時人気だった原子力工学も考えたが、「君の能力を原子爆弾や水素爆弾に向けたら危険だ」という友人の指摘で断念したという。ただ、医学部受験では、始まったばかりの共通1次試験で手痛い失敗をした。政治経済や倫理社会で敗北。さらに国語も満足できる結果ではなかった。

 失意の中で担任の教師から「医師になりたいなら、大学にこだわることはない」と言われ、京都府立医科大学の受験を決心する。見事、現役合格を果たした島田氏だが、入学すると寄り道を始めた。

 さすがに4月はキャンパスに姿を見せたが、その後は家庭教師のアルバイトと旅行に明け暮れる学生生活だったという。ただ、そのアルバイトに後の発明家・起業家としての素養が見える。

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