島田 最新作は、獣害対策用のLED照明です。私は脳や視覚の研究をしていたんですが、実は獣害の原因になっている鹿やイノシシは、青色と緑色の光しか見えていない。だから、その視覚特性に合わせた色の波長で光らせれば効果が高い。獣害は、日本だけの課題ではないですからね。結構、いろいろなところでLEDのニーズはあるんです。

 ヤンチャーズは、技術開発をメインにした会社にしたいと思っています。LED関連の特許も結構取得しています。結構、業界が震撼するような特許もあると思っていますよ。そうした技術をコアに新たな技術開発や製品企画を手掛けていきたい。モノを売るだけではなく、コツコツと製品のアイデアやビジネスモデルを考えるのが好きなんです。

加藤 ベンチャー企業の経営の経験で、どんなことを感じていますか。

島田 産学連携や大学発ベンチャーについての実態を見てきましたが、正直なところ日本は小さな会社には厳しい環境だと思います。私は外科医という本業があるので今のところ食べるのに困ることはありませんが、そうもいかない会社もあるでしょう。

 日本で大切なのは、成功の事例を作ることだと思っています。どうしても、みんなで足を引っ張り合って、つぶし合う傾向がある。失敗をあげつらうのではなく、小さな成功体験を増やすことが大切なんです。

 こういう活動をしているので、大手メーカーの担当者と話すことも多い。でも、彼らには面白い話を聞いたときに、それを盛り上げて一緒に一歩前に踏み出す感じがないですね。「面白いけれど、マーケティングの部門に聞いたら、それはちょっとできないです」という感じで。

プロならば、自分で責任を取るべき

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島田 マーケティング至上主義というのでしょうか。本当にそれでいいのかなと思います。もちろん、市場調査などは大切ですが、それは過去の結果を表しているに過ぎないわけでしょう。将来の作戦を立てるときに、他の部門の話をうのみにしていいのでしょうか。医師が手術の方針を決めるときに「他の科がダメだといっている」という理由ですべてを判断したら怖いでしょう? プロフェッショナルというのは、自分で責任をとらなければならない。それを恐れているように見えます。

加藤 確かにそういう傾向はあるように思います。

島田 世の中に確実なことは存在しないんです。医療だってそう。絶対に失敗しないという保障はない。あるかもしれないリスクを避けようと頑張るわけです。

 今は何がリスクで、何がリスクではないかが特に分からない時代です。これまでの日本は、安定していて、福祉が充実して、均質な社会というのが一番と考えて突っ走ってきた。でも、そういう社会を信じてしまうことが、将来は最も不確実かもしれないですよね。

 何をもって成功とするかは議論があると思います。でも、挑戦する試みや生き方があるというのを、社会に知らせなければならないと思っています。私がやっていることだって、簡単にものすごく儲かるわけではないですよ。でも、夢はあります。その夢を語ることで社会に恩返ししたい。特に次代を担う子供たちが、その姿を見て好奇心を持つキッカケになったらいいと思っています。

(次回に続く)