島田 私は、チャンスがあったらギリギリでも人に会ったり、いろいろなことを試してみたりしようと思うタイプです。だって、会ってみなければ理解できないことってあるでしょう。

 原点は高校のときです。社会の授業で先生がこう言うんです。「ええか、海外の偉い人がこう言っている。『プリンの味は食べてみなければ分からない』と。だってな、プリンには間違えて塩が入っているかもしれんやろ。食べてみなければ、最後まで結果は分からんのや」。

 なるほど、と妙に感心したんですよ。それ以来、その主義を貫いています。手術も最後まであきらめません。例えば、術部の画像を見た段階では手術が難しそうだという結論でも、自分の長年の勘でいけると感じたら手術をやってみる。実際に手術してみると、実は画像での診断は取り越し苦労だったということも多いんです。

加藤 その考え方が、ヤンチャーズの起業につながるわけですね。試してみなければ分からないと。

島田 研究チームの活動が、大学発ベンチャーの支援制度に採択されました。そこで起業することを前提に1億5000万円の資金を得たんです。開発したLED照明を清水寺に採用していただくことが決まって、必要としてくれる市場があると確信できた。だから、本格的に起業しようと決めました。どんなにすごい技術革新でも、本当に必要なものでなければ製品は売れないですよね。必要と思ってくれる顧客がいるのであれば、会社を作った方がいいと思ったのです。

おっさんやけど、“やんちゃ”やから…

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加藤 「ヤンチャーズ」というのは面白い社名です。

島田 もともとヤンチャーズは、藤田教授が研究チームに名付けた名称です。「俺らはおっさんやけど、“やんちゃ”やから、ヤンチャーズにしよう」と。

 研究チームでは、LEDの医療応用とLEDモジュールの開発をしていました。当時、私は助手だったのですが、研究チームの代表をしていまして、その下に京都大学や大阪大学の有名な先生たちが控えているという不思議なチームでした。

 ベンチャー支援制度で補助金だけ受け取って会社にしていない研究チームも結構あります。でも、支援してもらったんだから会社をきちんと作って、国のために税金を還元してこそ責任を果たせる。藤田教授も、常日ごろからそう話していました。

加藤 ヤンチャーズは、どんなビジネスを手掛けているのでしょうか。

島田 今は、LED照明を使ったライトアップを管理するシステム事業や、太陽電池とLEDを組み合わせた屋外照明などの製品の販売を手掛けています。