2004年に全国規模の開発力調査を始めて以来、のべ200社近い企業が参加してきた。2008年にはドイツの大手自動車メーカーを含む欧米企業の開発力調査(2008年度版開発力白書はこちら)も実施した。その一方で日本製造業関係者はアメリカやドイツではなくアジアに注目しており、多くの参加企業から韓国企業と比較したいという要望があった。当時は、「日本の製造業が韓国に抜かれたとは思っていないが、足音は確かに聞こえてきている」「開発力調査の結果比較をすることで距離感をつかみたい」そんな声が多かった。それから数年が経ち、さらに力をつけてきている韓国企業がどのような状態なのか気になるところだ。

 そこで今回は、韓国の大手コンサルティング会社の協力のもと実施している、韓国製造業の開発力調査の結果をご紹介する。

韓国製造業が優勢?

  韓国での開発力調査は開始直後ということもあり日本の調査規模と比べると小さいが、グローバルで活躍している大手の家電、電子系企業を含む7事業体のデータを得ることができた。iTiD INDEXの全56設問の結果を製品開発プロセスの10領域に分類し、日本と韓国を領域ごとに比較した結果が図1だ。差の大小はあるとしても、すべての領域において韓国平均が日本平均を上回っている。この結果を見て多くの人がショックを受けたのではないだろうか。サムスンの巧みなマーケティングやデザイン重視の製品戦略に代表されるように、一般的には韓国製造業の強みは製品企画力にあると考えられているが、企画領域のみならず、構想、詳細設計領域も差をつけられ、プロジェクト計画領域に至っては大きく水をあけられている。もはや開発力までも韓国製造業に追い越されてしまったのだろうか?

図1

日本の上位陣はやや優勢

 ここで少し考えてみると、冒頭で述べたとおり韓国側のサンプル数はまだ少ないが、参加しているのは韓国でもトップクラスの著名なグローバル企業である。一方、先ほどの日本の平均値は約100事業体からなる全国平均なので、これらを比較するのは適切ではないかもしれない。そこで、開発力が高かった家電、電子および自動車関連を含む日本の上位20事業体の平均値と比較してみることにした。その結果が図2である。

 今度は先ほどよりも差は大きく縮まり、逆に日本平均の方が多くの領域において優位になっているようにも見える。実際、開発力の総合平均は、日本TOP20が3.35なのに対して、韓国平均は3.33であった。意味のある差があるとは言い切れないが、少なくとも日本の上位企業が開発力の面で劣勢に立たされているわけではなさそうだ。

図2

企画に強い韓国、設計に強い日本