多視済済!

2が正解。親がひざの上に幼児を抱き上げて,座らせるイメージだ。

 もともと人間の機構を機械的に実現すること自体が目的だったとはいえ,ビジネスへ応用したい,とOKIは考えた。思い付いたのが,いすへの利用。担当者の頭の中には,親のひざの上に子どもが座っている風景が浮かんでいた。

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「1脚ロボット」の応用コンセプト。写真の人の脚は座る立場ではなく,座らせる立場(親のひざ)としてのもの。

 これをオフィス家具メーカーの岡村製作所でプレゼンテーションしたときのキーワードが「抱きつつまれるような座り心地」。実はこのキーワード,いすメーカーにとっては「直球ど真ん中」だったのだ。

 理想的ないすとは,大腿部の裏側からお尻,腰,背中にかけて満遍なく体重が分散するもの。それでいて,腰の動きを阻害しないものだ。「座っているときの腰の負担は,立っているときの約1.4倍」(岡村製作所マーケティング本部オフィス製品部企画担当の沼直樹氏)にもなるため,しばしば腰を動かして筋肉などをほぐすことが大事とされる。これらの点で,子どもにとって親のひざは,理想的ないすなのだという。この「親のひざ」代わりに1脚ロボットを使おうというのが,基本的アイデアだ。

 両社はいすに向くよう,動力を外したり,ばねやダンパの強さを調節したりして開発を進め,2009年6月に発売(製品名「LEOPARD」)。2010年1月には一般オフィスにも向く,ヘッドレストを省略したタイプの受注も開始する。

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岡村製作所とOKIが共同開発したオフィス向けいす「LEOPARD」の第2弾製品(2010年1月受注開始予定)。

 LEOPARDは,誰も座っていない状態では,座面(=大腿部)が斜めになっている。上からの投影面積が狭いから,実は何気なく座っても「位置決め精度」が高い。座面が沈み込む一方,背もたれは垂直なまま角度が変わらないので,人の背中に沿って広範囲を支える位置になる。言い換えると,背もたれと背中の間にすき間ができない。

 すっぽりといすにはまり込むように座れる上,体を簡単に動かすこともでき,しかも任意の位置でぴたりと止められる。OKIはこの実現のために,ITツールを用いたパラメータ・スタディーを実施した。座面と背もたれのヒンジ位置は,座面高さではなく人の腰の高さに一致させてあるので,体を動かしても背もたれの密着感は変わらない仕組みだ。

いすに腰を下ろす動作,座りながら姿勢を変える動作,立ち上がるときの動作を,ロボット技術由来の機構で支援する。