多視済済!

  テーブルにこぼしてしまったマヨネーズ。取り除くだけなら,台ふきなどでふき取ればよい。しかし,このマヨネーズを,もし軟らかくて崩れやすい「ワーク」だと考え,形を保ったまま別の場所に移さねばならないとしたらどうだろう。薄い板の先端を押し当てて,テーブルとワークの間に潜り込ませようとしても,形が崩れてしまうのは容易に想像がつくだろう。

  では,前ページの連続写真のように,そのままの形でワークを移すにはどうすればよいか。そこで考案されたのが,往復運動する1枚のプレートと,その約2倍の長さを持ったシートで構成する装置だ。

  シートは,プレートを包み込むように折り返してあり,シートの両端は本体に固定してある。待機時にはプレートが本体の真下に位置し,ワークの搬送時にはプレートの先端が大きくせり出すように動く。シートは,このプレートの動きに伴って折り返し位置を変化させながら,常にプレートを包み込んだ状態を保っている*1

*1 古川機工のWebサイト(http://furukawakiko.com/)で動画を見ることができる。

  ワークを運搬するには,プレート(シート)の先端を軽くテーブルに押し当てながら,装置のスイッチを入れるだけ。本体の位置は動かさない。すると,シートがプレートの下側から送り出される長さと,プレートの移動量が同じになり,シートが少しずつワークの下に潜り込んでいく。この際,ワークの既にシートの上に載った部分と,まだテーブルの上に残っている部分の関係が保たれるため,その形が大きく崩れないのだ。

  このハンドリング装置を開発したのは,食品機械などを手掛ける古川機工(本社新潟県長岡市)。もともとは,油揚げのような軟らかい対象物を袋詰めするために考案したという。

  その後,パン生地の搬送設備で実用化され,同社はさらに応用範囲を拡大させるため,ハンディータイプの装置を製品化した*2

*2 製品名は「SWITL」。価格は6万9000円(税別)。

  このハンドリング装置が有用なのはマヨネーズだけでなく,ケチャップや豆腐など,ゾル―ゲル状の物質だという。粉末は,この装置をもってしても形が崩れやすく,重すぎるものや硬いものも難しい。

  表面がツルツルした場所に限らず,例えばティッシュペーパーの上のワークも同様に取り上げて,移し替えられる。

  さて,あなたならどんな用途を考えるだろう?