常識は覆される

  右に盛られた茶色い物質は「リグニン」と呼ばれる。木質のおおよそ3割を占め,セルロース,ヘミセルロースと並ぶ,木の主要成分の一つだ。仮に,木を鉄筋コンクリートの建物に例えれば,セルロースとヘミセルロースが鉄筋,リグニンがコンクリートの役割を果たす。そんなリグニンを出発原料に,森林総合研究所,東京農工大学,長岡技術科学大学の3者は共同で,飛び抜けた性能を持つ機能性材料の開発に成功した。

  実は,リグニンは,巨大で複雑な分子構造を持ち,極めて分解しにくい物質とされる。そのため,パルプの原料や甘味料,医薬品などさまざまな用途に利用されているセルロースやヘミセルロースと異なり,直接燃焼や炭化以外にバイオマス原料として利用するのは難しいと考えられてきた。上述の開発成果は,こうした従来の常識を打ち破るものだ。

  一体,3者が開発した機能性材料とは何か。そして,リグニンを利用するメリットとは何か。