結果を見てみると、問題児が減少し、金のなる木と負け犬が増加していることがわかる。つまり、高成長製品への投資は減り、低成長製品への投資が増えている。言い換えると、日本製造業は新しい市場を開拓する製品開発よりも、限られた市場内のシェアを追い求めている傾向にある。

次に製品開発における技術難易度はどのように推移しているのであろうか。図3も開発力調査にて得られた、2007年度(約4500名)と2010年度(約9000名)の製品開発における技術難易度を比較したデータである。

図3
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 2007年度よりも2010年度のほうが、難易度の高い技術を用いて開発していることが分かる。

 このデータと、先のプロダクト・ポートフォリオの結果を見ると、日本製造業は将来大きな利益が見込める成長率の高い市場ではなく、ある程度の利益を得ることができる成長率の低い市場向けに、技術難易度の高い製品を投入していることが分かる。このままでは日本製造業の更なる成長が難しいのではないだろうか。

世界に通じるイノベーティブな製品開発

 今回は、2007年度と2010年度の開発力調査で得られた数値データを比較しながら、日本製造業の実態をみてきた。製品開発は効率化できているものの、成長性の高い市場へチャレンジする開発にあまり取り組めていない様子がうかがえた。東日本大震災での製造業に対する打撃も大きいが、すでに脅威となっている韓国や中国の開発力や、グローバル対応も日本の製造業の課題とされている。

 このような状況だからこそ、開発を効率化するだけでなく、積極的に成長率の高い市場へ投資し、世界に通じるイノベーティブな製品を世の中に送り出すことが、日本製造業が更に成長するポイントだと考える。

 次回は、成長著しい韓国の開発力調査結果の概要をお伝えする予定である。