ゴルフのスコアが伸びない時に、打ち方が悪いのか、それとも本番に弱い精神力が問題なのかよく分からず、最終的にクラブセットを新調してはみたものの一向にうまくならない。そんな経験をした、もしくはそんな人を見かけたことはないだろうか。なぜそうなるのかは明確で、結果を招いているプロセスの特定が不十分だからだ。ゴルフボールをただ打つだけでも、クラブの握り方、方向の決め方、構え方、振り方などなど数多くのプロセスが存在する。この一つひとつのプロセスと結果を突き合わせて、何が悪さをしているのかを突き止める必要がある。

図1
図1

 製品開発でも同じことが言える。製品開発には、開発遅延、仕様未達、出荷後の不良、コスト超過など多くの問題がつきものだ。そして、それらの問題のほとんどが製品開発プロセスに起因している事はよく知られている。しかし、製品開発プロセスのどこがどれくらい悪いために問題を引き起こしているのか? となると、あいまいな事が多いのではないだろうか。

 QC活動などで有名なデミング博士が「測れないものは改善されない」という言葉を残したように、製品開発プロセスも測定する必要がある。それを可能にしたのが開発力調査だ。

 前回は、2010年度の開発力調査の結果をみる限り日本の製造業はまだまだ頑張っている様子がうかがえるということを話した。2回目の今回はあらためて開発力調査がいかなるものかを説明する。

測れないものは改善されない

図2
図2

 まず、最初に開発力とは何かを明確にしたい。開発力の定義にはいろいろあるが、ここでは「開発力とは単なる固有技術ではなく、開発のプロセス、技術者のマインド、組織体制、ITシステムなどを含む製品開発に関する総合的な能力のこと」と定義する。

 我々はその中の、固有技術を作り上げる上でも、またインフラ・システムを使用する上でも重要となる「プロセス」と「人」に着目し、それらを定量的に評価する指標を開発した。開発プロセスを測る指標をiTiD INDEX、技術者のマインドを測る指標を技術者力INDEXと呼んでいる。それぞれの指標は質問形式で記述されていて、各企業の調査対象者が回答することで開発力調査を行っている。自己申告によるアンケート調査ということもあり、信憑性に疑問を抱く人がいるかもしれないが、質問内容を具体的にし、そしてなるべく多くのデータを集めるなどして信頼性を上げる工夫をしている。論より証拠、過去10年間の調査で、アンケートの分析結果と実際が大きく乖離していたことは全くと言っていいほどない。

製品開発のあるべき姿