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第16回・ガラパゴスで生まれた最強のDNA

津田 真吾=iTiDコンサルティング ディレクター
2011/07/11 00:00
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ルンバが問いかけたこと

 お掃除ロボットを買ったのは約1年前。

 ルンバは単なる自動掃除機ではありませんでした。妻のご機嫌を取っただけでなく、このコラムを書こうと思った大きなきっかけとなりました。

 正直、ルンバを買うまでは“家電は日本製”という不文律を持っていました。小さく小回りが利き、ヘッドも日本の家具に合うように小型。畳と絨毯のどちらにも効果を発揮するような工夫や、排気のきれいさや騒音にまで配慮がされている製品は外国にはありません。アメリカの家電量販店に行けば、日本では業務用と呼ばれるような無骨で大型ハイパワーなものばかりが並んでいます。それなのに、ルンバを買ってしまったのです。正確に言うと、我が家2台目の掃除機としてルンバが選ばれました。なぜその地位を日本のメーカーが奪えなかったのでしょうか。あるいは、なぜ日本の掃除機がアメリカの家庭で2台目として普及していないのでしょうか。

 一般に、2つの要因があると言われています。一つは、日本の市場が“ガラパゴス”で特異だから、という点です。日本の住環境に適した技術ばかりが身につき、それ以外に発展性を持てなかったというものです。もう一つは日本の市場規模がそれなりに大きく、居心地が良かったため発展、応用する動機がなかったというものです。

 つまり、日本の特異な住環境にだけ適応していただけということです。いわゆるガラパゴスな市場で育った掃除機は他には通用しないと。ところが、技術的な能力は優れていませんか。日本の消費者の方が海外の消費者と比べると一般に厳しく、容易に受け入れてくれないのではないでしょうか。掃除機なら、ある程度のパワーがあり安ければ、品質や耐久性、あるいは大きさはあまり問われない市場のほうが多いはずです。

強いDNA

 エレベーターの「500円玉テスト」をご存じでしょうか。500円玉をエレベーターの床に垂直に立て、振動で倒れるかどうかを判断する評価があります。動き出して目的の階に到着するまでに倒れてはいけないという厳しい基準は、諸外国のエレベーターメーカーにとって鬼門とされており、日本市場にあまり参入できていいない一因と言われています。実際に、世界でシェアトップ2のオーチス社やシンドラー社は国内ではいずれもトップ3に入っていません。裏を返すと、高品質を誇る日本のエレベーターは世界的に普及していないと言えます。ほかに、日本のカーナビも特筆すべき製品です。日本で一般的な高度なグラフィックエンジンを搭載した大画面の製品は海外ではほとんど見ることができません。世界で普及しているカーナビはずっと単純なポータブルタイプ(PND)となっています。背景としては、日本の複雑な道路事情や盗難の少なさ、渋滞によるエンターテインメントや道路情報のニーズなどがありますが、これもまた“ガラパゴス”な事情です。製品だけではありません。日本の鉄道ダイヤの正確さは世界に類をみないほどです。サービスの品質も際立っていると認識してもよいのではないでしょうか。

 このように、日本の私たち消費者の高い品質要求や、製品を見る細かい目に応えるように、日本の製造業は力をつけてきました。日本を代表するデザイナーである原研哉氏は「デザインのデザイン」という書籍でこう記しています。

センスの悪い国で精密なマーケティングをやればセンスの悪い商品がつくられ、その国ではよく売れる。センスのいい国でマーケティングを行えば、センスのいい商品がつくられ、その国ではよく売れる。商品の流通がグローバルにならなければこれで問題はないが、センスの悪い国にセンスのいい国の商品が入ってきた場合、センスの悪い国の人々は入ってきた商品に触発されて目覚め、よそから来た商品に欲望を抱くだろう。しかしこの逆は起こらない。

 “ガラパゴス”とは決して生ぬるい環境のことを指しているわけではありません。むしろ、日本の消費者は世界的に見てもっとも目の肥えた人たちの集まりなのではないでしょうか。 日本は実際のガラバゴス諸島のように、無菌状態に保護しなければ動物が死滅するような環境ではなく、凄すぎて外国の市場が「引いてしまう」と捉えたほうがよいのではないかと筆者は感じます。さらに、原氏が書いているように「触発されて目覚める」ことを待っていると信じています。現に、アメリカに住む友人に尋ねると、一度日本車を買うと、トラブルやメンテナンスから解放されるだけでなく、耐久性の高さゆえ転売価格が維持されるため、二度とアメ車には乗れないと言います。

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