リーダーシップに課題

 次に、2010年度の開発力調査から追加された「技術者力」に関する調査結果を紹介したい。こちらも調査の詳細については次回に説明するとして、簡単にいえば、「技術者がどのような姿勢で製品開発に臨んでいるのか?」を、技術者魂、コミュニケーション、チームワーク、リーダーシップ、モチベーションの5つの領域に分けて測定したものである。図5が2010年度の調査結果である。

図5
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 これを見るとリーダーシップの領域が弱いということがわかる。次世代のリーダーが育っていないという悩みを多くの企業から聞くが、その通りの結果が出たということになる。実際は育っていないのではなく、育てていない企業側にも責任はある。事実、リーマンショック以降、人材育成に従来よりも力を入れ始めた企業が増えている。

プロジェクトの成功要因に変化

 最後に、成功したプロジェクトと失敗したプロジェクトの違いを簡単に紹介したい。図6は、2010年度調査において成功したプロジェクトと失敗したプロジェクトの開発プロセスの状況と技術者力をそれぞれ比較したものである。前回2007年度調査の分析結果から、開発プロセスの善し悪しとプロジェクトの成否に相関があることが導きだされたが、やはり2010年度の調査においても同様の結果が得られた。どの領域においても、成功したプロジェクトのポイントが大きく上回っていることがわかる。しかし、詳しくデータを見ると、プロジェクトが成功するためのキープロセスは2007年と2010年で多少異なることがわかった。新たなキープロセスが何なのか?そしてなぜそのプロセスが重要なのか?などについては今後の連載の中で解明していきたい。

図6
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 連載1回目となる今回は2010年度調査結果のサマリーをご紹介した。近年の日本の製造業についてはいろいろ不安視されているが、データを見る限り決して後退してはおらず、むしろ次のチャンスを狙って着々と準備を進めている企業が数多く存在することがうかがえる。苦しい時代でも頑張っている日本の製造業の姿に勇気づけられる。

 次回は開発力調査の中身について説明しながら、さらに詳細なデータについても公開していく予定である。