「超認識」と「超アイデア」

 「認識のカベ」と「アイデアのカベ」は表裏一体です。ここでは、今までの延長上で解析的に求められる「認識」や思いつきレベルの「アイデア」と区別するために、ここでは「超認識」、「超アイデア」という言葉を使ってみましょう。見えなかった問題を認識し、新しい解くべき問題として設定する「超認識」の力とともに、それらの答を導き出す「超アイデア」はどのようにして得られるのでしょうか。

 世の中にアイデアマンといわれる人がたくさんいます。経験上それらの人に共通するのは、いろんな分野に渡る幅広い興味、そして知識の引き出しの多さです。そういったアイデアマンは個人の才能によるところも大きいと思いますが、経験や訓練でも一定レベルは身につけることは十分可能です。

 常に問題意識を持ち、ケタ違いのアイデアを自分に課すこと、更に様々な知識を追い求めることで、「着眼力」、「展開力」といった力はスキルとして身につけることは可能です。そして単なるアイデアを実際の事業や製品・サービスに近づけていく「目的適合性」を意識することでそれらは有用な力となりえます。最初の段階は、訓練や目的意識を持つことでスキルとして身につけることは可能なのです。

 「アイデア」を「超アイデア」に高めていくには、それらを積み重ねて自分の力を高めていくという愚直な方法しかありません。武道や芸などの世界では、守破離という言葉が用いられます。「守」の段階で師匠の型を覚え、「破」で他の型も客観的に捉え、「離」で自分独自の境地を会得するという考え方ですが、アイデア発想においてもこの守のステップでスキルとしてそれを身につけるところから始めて、徐々に深めていくしかありません。

 このように、個人として「超認識力」と「超アイデア力」を高めることが第一のフェーズで必要になりますが、たとえそれらを身につけたとしても、組織としてそうした人材を有効に活用できなければ企業としての強みを発揮することはできません。

 そこで第二のフェーズである、超認識・超アイデアに基づく製品・サービスの種を自社の組織の中でどうやって実現していくかという問題を考えましょう。

 ものごとを多角的に捉え、従来の既成概念に縛られない人材、超認識力と超アイデア力を備える個人としての人材を取り込み、組織としてそうした個人に投資ができるかがこのフェーズでは一番重要になってくると考えています。

 私は、組織としての力を次のように定義しています。

P(組織力)= T(才能ある人材)× F(人材にフィットする環境)× I(投資)

 この式は、才能ある人材が存在し、その人が才能を伸ばせる環境に置かれていること、そしてそこに組織として投資をしていることが組織力を大きくするということを意味しています。

 T、F、Iのいずれが欠けても組織力は発揮できません。才能のある個人を見つけ、その才能を引き出し、その個人の能力を活かせる環境に人材を配置し、そこに充分に投資しているかが組織力を左右するのです。

 最近は日本企業でも多様性が重要視され、ダイバーシティという言葉もよく耳にしますが、まだまだ自立・自律した個人がその持てる力で真剣にそして自由に勝負するというところまでは至っていないように感じています。

 実は、上記の式は組織だけでなく個人にも適用できるのです。この場合、「T=自分の力」であり、「F=自分がその能力を発揮できる相応しい職場にいること」であり、そして「I=自己投資」となるのです。

 このような人材、即ち自立・自律したプロフェッショナルな個人を組織でも有効に活用することにより、「認識のカベ」と「アイデアのカベ」、特に「超認識のカベ」と「超アイデアのカベ」を乗り越えていくことができると考えています。