「認識のカベ」と「アイデアのカベ」

 最近のコンシューマー・ビジネスの動向をグローバルに見ていると、グーグルのビジネスモデルやiTunesをバックボーンにしたアップルのデジタルデバイス販売のビジネスモデル、グルーポンなどのクーポン購入ビジネス、フェースブックなどの新しいアイデアに基づくソーシャルネットワークなど、今までなかった新しいビジネスは枚挙にいとまがありません。

 しかし、これらの「発明的」に生みだされた新しいビジネスは、残念ながらほとんどすべてが海外発なのです。

 実はこの文章もスマートフォン HTC Ariaのテザリング機能を使い、iPad上のアプリNebulousからDropbox上で文章を作成・修正するというスタイルで書いています。気がつくとこれらの一連のハード、Webサービス(クラウド)、アプリはすべて海外製であり、残念ながら日本発のものは一つもありません。もっともハードに用いられている部品は日本製もあるでしょうが。

 これらの新しいビジネスを生みだすためには、単なるブラッシュアップではなく、「認識のカベ」、「アイデアのカベ」を乗り越えないといけません。ところが、このカベを乗り越える新しい製品、サービスが日本からはなかなか現れてこないのが実情なのです。これから、この二つのカベについて考えてみましょう。

 ここでいう「認識のカベ」とは、消費者のニーズやウォンツを認識するために乗り越えないといけないカベのことを指します。そして「アイデアのカベ」は、認識した新しいニーズ・ウォンツにマッチングするビジネスの仕掛けの種になるアイデアを生み出すために乗り越えるカベのことを指します。

 もちろん、これらの「認識のカベ」、「アイデアのカベ」もある程度は日常的に突破しているよという声もあるでしょう。前編で触れたパナソニックのインド専用エアコンなども今までの「認識のカベ」を乗り越え、新しいアイデアを取り入れた商品であるといえます。

 しかしながらパナソニックが乗り越えたカベは現在の市場状況を調査分析し、他社動向を調べることでわかるので、今までの手法で事実を積み上げ「解析的」にデータを読み解くことで到達できるものであり、発想という点ではそれほど難しくはないと考えています。むしろ難しいのは、過去の路線を捨て去ること、成功体験を疑うこと、そしてそれを組織の中で実行することです。日本企業はここまではなんとか到達していると思っています。到達したからこそ、こういった製品が出始めたといえるでしょう。