以前、製品BOM(部品表)の構築に取り組んでいる方とお話しする機会がありました。各部品に部品番号をつけ、階層化していく、そんな作業をしていると、やっていることが正しいかどうか、よりどころがなくなるというのです。それはそうです。設計側では機能別に部品をグループ化したがり、組み立てる側は工程ごとにまとめたい。調達サイドは、サプライチェーンが見えるようにしたい。このように、部門によるさまざまな理屈があると、何が正しいのか分からなくなるというのです。

 そもそも正しいBOMなんてあるのでしょうか。製品に必要な部品が列挙されていれば、BOMとしては合格です。あとは、「BOMを使って何をするか?」が基準になってきます。製品構造を標準化することが目的なら、標準のBOMツリーをつくるのも有効です。既存部品の再利用を促すなら、単なる部品のデータベースではなく、設計者にプッシュ型で部品を提案するような仕掛けが必要です。あるいは、部品の所要量予測に使用するのであれば、組み立て順をBOMに織り込んでいくことが重要になります。

 よりどころになるのは目的です。BOM構築が目的化すると「どっちが正しいか」迷います。良い状態なのかどうかを判断する軸が持てなくなってしまいます。その結果、BOMを作るのにかかる費用や工数ばかりが気になり、良いBOMづくりが余計に疎かになることもあります。

 同じことがプラットフォーム化にも当てはまります。「プラットフォーム化」を目的に進めると、どこかで迷いがでます。アーキテクチャの共通化とコストのトレードオフや、ラインナップ数と共通化のトレードオフにもぶつかります。明確な「目的」を持っていれば、そのトレードオフにも惑わされることなく、進めることができます。

 プラットフォーム化を実現するために何が最も重要なのかと尋ねられれば、私は迷わず「目的」と答えます。その目的は実にさまざまです。

  1. マスカスタマイゼーションを可能にし、製品を差別化するため
  2. 海外における現地企画開発を可能にするため
  3. 部品を標準化し、サプライチェーンを強化するため
  4. 受注開発生産から企画生産・提案型営業に移行するため
  5. 開発要員を増やさずに、モデル数を増やすため
  6. 現状の製品を小さな変更で新規市場に導入するため
  7. 品種を減らし、在庫・販売効率を高めるため
  8. 次のイノベーションを起こすのに必要な工数を捻出するため

 ただし、「プラットフォーム化」そのものを目的化することはあまりお勧めできません。理由は、前述したような“迷い”を解消できないためです。より上位の目的があると、良いでしょう。

 「良い目的」かどうかを2つの観点で評価してはどうでしょうか。

  1. より多くの人にとって共通の目的かどうか?(経営上のインパクト)
  2. 目的を果たせたかどうか、客観的に見えるかどうか?(可視性)

 「繰り返し設計がムダだから」という目的の場合、一段レベルアップすることを考えてみてはどうでしょう。“繰り返し設計”というのは、設計部門以外では、なかなか共有することができません。また、何が“ムダ”なのかは主観的になってしまうことが多いです。「繰り返し設計を減らし、新製品を1機種新たに開発するため」というレベルに上げることで、経営上のインパクトも可視性も格段に向上します。より多くの人に影響を与え、見える目的を掲げることで、迷いが減るだけでなく、協力者が増えるという効果も期待できます。

 なぜプラットフォーム化を行うのか、その目的を忘れれば忘れるほど、失敗の確率は高まります。なぜなら、製品設計に無数の解があるように、プラットフォーム化にも無数の解があるからです。その無数の解の中から、自分たちの目的にベストな解をぜひ見つけてください。

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