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新 誠一=電気通信大学教授
2011/06/07 08:00
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 発生から3カ月近くが経過した東日本大震災。福島原発はいまだ不安定な状況であるが,復興の動きも始まった。社会の動きに平行して,大震災による被害に関する見直しも進んできた。確認できたことの一つは,我が国の持ち味は現場力ということだろう。危機に及び強力なリーダーシップを発揮した偉人も過去にはいるが,皆現場を知りぬいた人である。リーダーだけでは何もできない。現場力を生かしてこそリーダーである。以上は,少なくとも我が国では異論は少ないであろう。しかしながら,世界中見渡しても現場力にここまでこだわる国は珍しい。これは世界に誇れる日本の特色の一つである。ここでは,現場力の観点から環境問題を見直してみよう。

 まず,環境問題がCO2削減という美名の下,原子力利用にすり替えられていたことを認識する必要がある。そのすり替えを許したのは,多消費型生活の見直しに正面から取り組まなかったことが要因の一つである。想定外の大震災,想定外の電力不足を経験した身としては,原点に返って環境問題を再考する必要がある。

 さて,製造業では現場力活用の仕組みをいろいろ作り上げている。5S(整理,整頓,清潔,清掃,躾)や小集団活動など世界に誇れる仕組みである。ここでは,「ムダ,ムラ,ムリの削減」という観点から環境問題を考えたい。まず,ムダの削減である。ムダとは活用されなかったものである。つまり,破棄物の見直しである。都市では排熱によるヒートアイランド現象に苦しんでいる。ゲリラ豪雨や竜巻による被害は日本に止まらず世界中が被っている環境問題である。同じようにゴミや汚泥と呼ばれる破棄物の処理が問題になっている。消費を抑え,回収に努め,そして再利用を図らなければならない。これがムダの削減である。これが第一歩である。

 次にムラを論じたい。原発の停止は今夏の電力需要に暗雲を投げかけている。ご承知のように供給能力を越える需要にはこたえられないためである。もっとも,昼間と夜間では需要に差がある。一年を通しても需要が多い時期と少ない時期がある。これらがムラである。ムラの削減には消費する時期のスケジューリングと供給するエネルギーの蓄積が武器である。前者は土日に働く自動車業界であり,後者は揚水発電や蓄電池の活用である。これが第二歩である。

 ムダとムラを削減した上で考慮すべきがムリの削減である。原子力利用ということがムリなのか,それとも自然エネルギーだけで賄うことがムリなのか,それとも多消費型生活を続けることがムリなのかを見直す必要がある。これが第三歩である。

 以上,製造業では当たり前の「ムダ,ムラ,ムリの削減」は環境問題解決にも有効である。何,新味が無い。違います,「ムダ,ムラ,ムリの削減」は,何から順番に行うべきかを整理したところが偉い。もちろん偉いのは,この言葉を作りだしてきた製造現場の皆様方である。環境問題に取り組む皆様,よろしいですか,ムダ,ムラ,ムリの順番ですよ。

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