自分がどの分類なのかが気になるかもしれませんが、製品開発をする際には買い手がどの層なのかを気にする必要があります。ある程度市場に普及した商品に関しては、その商品が持つ機能や性能よりはデザインや使いやすさ、価格などに重点を置くべきでしょう。逆に、一部のイノベーターしか興味をもっていない段階で商品ラインナップを拡大したところで、新しい顧客がつかめる可能性はとても低いのです。私たちは、過去に商品を買ってくれたお客様が、いつでも同じ理由で選んでくれるという錯覚に陥りますが、時代とともに市場、つまり顧客も成熟し、理由は移り変わります。

 パソコンメーカーのDELLを例にして説明します。創業後まもなくの1980年代後半、直販による迅速なメンテナンス・サービスが評判となり大きく成長しました。これは、買い手が製品の機能面ではなく信頼性などに魅力を感じたため、といえます。もし、コンピュータいじりを趣味とするユーザーが大半であったパソコンの黎明期であれば、メンテナンス・サービスはあまり魅力的に映らなかったのではないかと想像されます。

 DELLはやがて、Webを介したBTOを立ち上げ、ユーザーが自ら好みの仕様を指定しながら買えるようにしました。ユーザーが多様化していくことを予想し、最終工程で組み立てができるような製品設計を行っています。もしBTOを最初から行っていたとしたらどうでしょうか。少しでも高速なパソコンが欲しかった初期のユーザーには、速度を犠牲にしたグレードを選ぶことに価値を感じなかったのではないかと思われます。市場の成熟度にマッチしたタイミングでプラットフォーム化を行うことで、大きな成果を挙げています。

 プラットフォーム化がいつも万能とは限りません。普及のフェーズに合わせて考えていく必要があります。多くの人が慣れ親しんでいるクルマでは、車種ごとのコンセプトやデザイン、そして豊富なオプションなどが差別化要因になります。一方で、まだ一部のユーザーしか購入していない家庭用のソーラーパネルでは、あまり多くの選択肢があると、買う側も困ってしまうでしょう。導入・設置が簡単なシステムの開発や、アーリーアドプターの口コミを促すようなモニター制度などの開発が有効になると思われます。

 現在、大量生産を行っている工業製品は「大量生産」という性質上、既にある程度成熟した市場にいるのではないかと思います。そのため、プラットフォーム化が大変有効な手段となります。価格競争で疲弊する前に、さらに幅広いユーザー層から支持が得られるような成長への道筋を描くことが重要です。

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