このコラムではアジアビジネスに切り込むために知っておきたいコミュニケーションスキルや現場ですぐに役に立つ実践テクニックを徹底的に考えていきたい。特に中国ビジネスがメインのテーマ。三つの切り口でアジアでのビジネス展開を考える。

 第一に、アジアにおけるビジネス展開で日本企業がどんな点に気をつけなければならないかについて。これまで延べ300社にもおよぶ現地企業へのヒアリングから、日本企業のウィークポイントが浮き彫りになってきた。共通の問題点として挙げたいのは「スピード」、「フレキシブルな対応」、そして「チャレンジ精神」という三つのキーワード。日本企業の弱点と言ってもいいだろう。一方で、中国のローカル企業や中国に進出している台湾企業では、逆にこの三つのポイントを「強み」にしてビジネスを展開している。スピーディな意志決定や変化に応じたフレキシブルな対応、計画より実践というチャレンジ精神旺盛なビジネスへの取り組みが中国でビジネスを展開する上でのポイントだ。

 もちろん、日本企業の中にも成功事例がある。スピーディでフレキシブルな経営に取り組み、未経験の取り組みに積極的にチャレンジすることで独自の市場を自ら切り開いているのだ。このコラムではこのような成功事例や失敗事例を具体的に紹介しながら、中国ビジネスにおける注意点を徹底的に考えていきたい。

 第二に、人間関係作りのノウハウとネットワークの構築について考えていきたい。アジアでのビジネスは人と人との繋がりが重要。つまり、ネットワーク力が現場のビジネスを大きく左右する。会社対会社ではなく、個人対個人の関係構築がビジネスの基本。こうした点も会社への帰属意識が強い日本人ビジネスマンにとっては苦手なポイントだ。中国人はどのように人間関係を構築し、どのようにネットワークを広げていくのか、日本人ビジネスマンが注意すべき点を考えていきたい。人間関係の構築に役立つコミュニケーションスキルとその実践テクニックを紹介しながら、もっと多くのみなさんに海外でのビジネス展開に眼を向けていただきたい。

 第三に、このコラムでは台湾企業に学ぶべき中国ビジネスのポイントを考える。言葉が通じるから、同じ華人(漢民族)だから、共通の風俗や習慣があるから――私たちはこういった理由だけでもっと大切なポイントを見落としてしまっているのではないだろうか。このコラムでは台湾企業が持っている中国ビジネスのノウハウについても具体的に切り込んでいきたい。現地でのヒアリング事例から、台湾人の中国ビジネスにおけるノウハウが見えてきた。キーワードは本人主義、本土主義、本領主義という三つのポイント。これを「三本主義」という。台湾人経営者の考え方や台湾人ビジネスマンがビジネスに取り組む姿勢など、日本企業が学ぶべき点を整理しながら考えてみたい。

 好むと好まざると中国との接点は避けて通れない道になりつつある。偉大な隣人であり、しかし厄介な隣人でもある中国。アジアでのビジネス展開で中国とどのように関わっていけばいいか、このコラムではビジネスの現場ですぐに役立つコミュニケーションスキルや実践的なテクニックを意識しながら、中国ビジネスの注意点を取り上げていきたい。信頼できる中国人と危ない中国人をどう見極めるか、中国人と良好な人間関係をどうやって作っていったらいいか、こうしたテーマを徹底的に考えていきたい。