【対談】 ―― 杉山兄弟 × 加藤幹之

自分が作ったものは、評価しにくい

加藤 伊豆のご出身だそうですね。

竜太郎 そうです。静岡県の韮山町という町で、源頼朝が平家討伐の旗揚げをした場所と言われています。幕末に大砲を作るための反射炉などを作った江川太郎左衛門も有名です。

ロイロ COOの杉山竜太郎氏
1975年静岡県生まれ。1999年日本大学芸術学部を卒業。同年セガに入社。2007年にロイロを設立。
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加藤 ゴルフ場も多いですよね。暖かくていいところです。

竜太郎 そうなんですよ。でも、のんびりしすぎてますけど(笑)。

加藤 「ロイロ」という社名は、面白いですよね。由来は何ですか。

浩二 社名を決めるときに、いろいろと調べたんです。そしたら、意味のある言葉が社名になっている有名な会社は、意外に少ないんですよ。だから、あまり意味のない言葉の方がいいかなと思いまして。

加藤 そうなんですか。

浩二 そのときに「蝋色」という色の名前を見つけた。漆の光沢を表す言葉です。漆器は英語では「Japan」なので、日本を代表する会社にしたいと。

竜太郎 漆は単に塗っても真っ黒なだけ。でも、磨くと光沢が出る。ソフトウエアは目に見えないもの。そして、プラットフォームとして提供しないと大きなビジネスにならない。蝋色のように空気のようなプラットフォームになるといいねと二人で話したんです。

僕の方がしっかりしていた(笑)

加藤 ロイロの映像編集ソフトウエアの特徴は、高速処理だそうですね。主にGPUで処理しているとか。そもそも、GPUは画像処理用のLSIですよね。なぜ、ほかの会社は同じ技術で高速化しなかったんでしょう。

浩二 GPU上で動くソフトウエアを開発すること自体が技術的に難しかったんだと思います。最近でこそ、一般的なプログラミング言語に近いものを使った開発環境が登場し始めていますが、結構専門的なツールを使う必要があります。

 ビジネスの視点で見ると、高速化に特化するよりも、開発しやすい方法を選ぶ方が多いのでしょうね。GPUを使うと、ハードウエアやソフトウエアの互換性を保つのが、以前は難しかったんです。開発した編集ソフトウエアを違うパソコンで動作させると、動画などの表示が微妙に違ったりすることもありましたから。もう一つ、動画編集ソフトウエアの業界自体が硬直化していたところもあるのかもしれません。新しい技術を開発する人も少なかった。そういう背景で、同じような技術をやろうとは思いつかなかったんでしょうね。

加藤 特許も出願しているんですか。

竜太郎 出願中です。

加藤 ビジネスモデルは。

竜太郎 今はWebサイトでの販売と、デジタル家電やパソコン向けにバンドルで提供するビジネスがメインです。2010年には、教育機関向けの動画編集ソフトウエアも発売しました。小学生などが直感的に使えるよう工夫していますので、授業や課外活動などで使ってもらいたい。全国の学校を回って、売り込んでいるところです。

加藤 技術開発担当の弟さんが社長で、企画営業担当のお兄さんがCOOというのは面白いなと思いました。なぜですか。