III. 福島第一原子力発電所事故対策への米国との思い切った協力

 国民の安心・安全や日本のエネルギー問題における、福島第一原子力発電所(以下、福島原発)事故の重大さ、並びに国際社会へのインパクトの大きさに鑑み、同原発問題への短期対策を中心に、以下の通り緊急提言する。

1.短期対策

(1)福島原発事故対策の総司令塔(オペレーションルーム)に対し、科学的な知見や選択肢を提供すべく、原子炉設計や運転の経験のある専門家を含む、産学官の専門家を結集すべきである。

(2)福島原発事故は、まさに未経験の大事故であり、日本が自力で迅速・効果的に対応することは極めて困難である。従い、スリーマイルアイランド原発事故対策の経験を持つ米国の協力を、可及的速やかに得ることが不可欠であり、日米合同福島原発対策会議(オペレーションルームの特別諮問機関としての位置づけ)を設置すべきである。日米合同で福島原発問題に対応することが、国民の安心と安全のため、また、本件の早期解決による日本経済の再建のために、更には日本に対する国際社会の信頼を維持するために必要である。

(3)ローレンスリバモア米国立研究所のNational Atmospheric ReleaseAdvisory Center (NARAC)等、米国の原子力技術の最高峰ラボ等との提携を政府として行い、放射線飛散状況の把握、住民退避の具体案、今後の対応策などにつき、同研究所の先進的モデリングシステムの導入を選択肢と考えるべきである。

(4)放射線による被害拡散をミニマイズするため、充分な遮蔽能力を持つ、防護テント等の活用も検討すべきである。

(5)未だ原子炉冷却システムが復旧して来ない状況下、外部からの真水散布、注入による原子炉冷却を当面継続せざるを得ないが、放射線汚水の処理の実施が急務であり、暫定的な貯水タンクへの貯水にも限界がある事を踏まえ、大型タンカー等汚水を大量に蓄積出来る洋上設備の準備が必要である。

(6)福島原発の原子炉冷却システムが復旧し冷温停止の状態が維持される事が確認され、福島原発現場の撤去作業が本格化した際の作業環境の整備計画の策定が必要である。低レベル~中レベル~高レベルに汚染された瓦礫の分別、撤去、更に、大量の放射能廃棄物の域外への搬出方法等を効率よく実施する為の資機材の手当てには、数ケ月もの時間が要されるだけに、遮蔽容器、重機、運搬機などの手当てを今から始めておく必要がある。

2.中長期対策

 福島原発事故の被害を最小限に食い止めるべく、関係者による懸命の努力が続いているが、事態が収束した段階で、以下のような対策を取るべきである。

(1)日米合同で原発3S(safety/安全性、security/安全保障、safeguards/保護)対策会議を立ち上げるである。3Sは日本1国で対応できるものではなく、国際的に取り組むべき重要課題であるが、先ずは、原発最大保有国であり、且つ原発先進国である米国と共同で取り組み、逐次フランス等の参加も招請すべきである。

(2)原発運転につき、日本は、リスク評価を含むrisk-based systems approachの導入を進めるべきである。また、原発運転要領につき、quality assuranceを含め、新たな方法、ソフトを導入すべきで、これらにおいて先進している米国との協力を強化することが必要である。

(3)日米協力を以下の点についても強化し、日本の原発運転能力改善に資す べきである;crisis management, response support tools and services, waste management, contaminated soil management, water management, human capital development (nuclear engineer training etc), site planning of nuclear reactors, site planning of spent fuel rods。

(4)科学技術最先進国である米国と協力し、原発安全性の飛躍的強化のための、革新的原発技術開発を共同で進めることも必須である; 先端材料、事故対応用高機能ロボテイックス、放射線飛散防止技術、革新的冷却システム、想定値最大化による耐震・耐津波技術、海上原発、分散型電源用小型原子炉、廃炉、放射線被曝治療方法、汚染モニタリング総合システム。