MEMS製造を簡略化するためのもう一つの理由は性能の向上である。なぜなら、消費者向けの電化製品だけでなく、産業や医療、軍事の分野においても、MEMSデバイスのさらなる活用が期待されているからだ。要するに、より良いデバイスを適正価格で販売することが求められている。

 三つ目の理由は、デバイスの価格を下げるだけでなく、機能に対するコストを下げることである。

 図3を見れば分かるように、MEMSプロセスの成熟度は様々である。接着や陽極接合、フッ酸蒸着といった今日利用されている技術は、将来においても利用が増え続けることはないだろう。

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 1990年から、MEMS産業は様々な試練に直面してきた(図4)。90年代における大きな試練は、適正な歩留まりと機能を両立したデバイスの製造プロセスの開発であった。2000年代までには、コーム・ドライブ構造が、慣性運動を計測するための重要なMEMS構造の一つになった。そして、2010年代までには、デバイスのレベルでかなり大きな革新が起こっている。発振器や同調フィルタ、オート・フォーカスといった機能が実装され始めたのである。パッケージングは今や、要求される集積化のレベルを達成し、数量や仕様に関する顧客の要求を満たすために決定的に重要な要素になった。また、DRIE(deep reactive-ion etching:深堀り反応性イオンエッチング)やウエハー接合といったMEMS向けの技術が、高度なパッケージング産業に利用され始めていることも重要である。CMOS MEMSと3次元集積のどちらを選択するかという問題は、この10年間で重要になった。

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 MEMSにとっての新たな試練は、デバイスによって実現される機能に関連したものである。多くの企業が一つのデバイスにより多くの機能を組み込むように要求している。そういった機能を実現するためのソフトウエア開発も増えてきている。仏Movea社は、この分野の発展を示す最も良い例である。この流れについていけない企業は生き残れないかもしれない。