21年以上の間、仏Yole Developpement社が定義したMEMSに関する法則「1製品、1プロセス、1パッケージ」はずっと有効であり続けている。その法則の意味は、個々のMEMSデバイスに対して、個別の製造プロセスとパッケージング・プロセスが必要であるということである。

 MEMSはCMOSデバイスではなく、CMOSの標準プロセスやpn接合は存在しない。そのため、プロセスの標準化が不可能である。しかし、いくつかのMEMSファウンドリやMEMSデバイス・メーカーは、様々なMEMSデバイスに適応した技術的プラットフォームを開発中である。彼らの狙いは、個々のデバイスを製造するための個別のプロセス・フローを開発することである(図1)。

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 こういった企業は、技術的なプラットフォームに加えて「商品プラットフォーム」の開発にも力を入れ始めている。例えば圧力センサや光学センサといった商品で、顧客のニーズに適合させられるものだ。こういった進化は、顧客の要求を満たすだけでなく、MEMS産業のビジネス構造にとても適しているといえる。これを行っている企業の例としては、Nasiriプロセスを利用している米Invensense社が挙げられる。

 またパッケージングは、今では一般に付加価値工程段階と捉えられている。パッケージングは、完全な初期段階、つまりデバイスの設計段階でパッケージング・コストを低く抑え、デバイスの機能を決定するために考慮される。古典的な例では、特定の工程段階を省くために、デバイスにASICを載せることが挙げられる。慣性センサや共振器に使用されるC-SOI(キャビティSOI)の開発を見れば分かるように、実際には、パッケージングはMEMSデバイスの一部となっている。

 多くの新しいプロセスが、MEMS製造を簡略化するために利用されているが、それにはいくつかの理由がある(図2)。その一つは、デバイスのサイズを縮小することである。それは今やコストを減らすためのXY軸方向だけでなく(シリコンの使用量を減らしてコストを下げ、マザーボード上の実装面積を小さくするということ)、携帯電話やタブレット端末、MP3プレイヤーなどの携帯機器に使用するためにZ軸方向にも行われている。Invensenseは携帯電話メーカーの要望に応える形で、パッケージの厚みを1mm未満にすることに成功している。

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