この表からわかるように、A社の売れ筋モデルには「リズム洗浄」機能があります。一方で「リズム洗浄」機能のないモデルを購入する消費者もいます。変数が多い状態をひも解くため、回帰分析を利用して各要件の市場価値の関係を導きます。統計処理ソフトの力を借りれば、各要件の有無と売上の関係を予測値として出すことができます。

 この図のように、ある程度の精度で各要件と売上の関係を表せることがわかります。それぞれの要件が売上にどう寄与しているのかを見ることで、各要件の市場価値が算出できます。

 この分析から、温水洗浄便座が持つさまざまな要件のうち、「そでなしデザイン」は売上を増やす効果が一番大きいことがわかります。価格が高くても、それを上回る購入者を見込め、総売上は増加するような要件です。このような要件は付加価値が市場に認められているため、プラットフォーム化を考慮してもよいでしょう。逆に、「リズム洗浄」や「脱臭」については売上を低減させる効果があるため、プラットフォーム化には適しません。つまり、この機能に対して追加費用を支払いたいと感じている消費者はさほど多くないということです。負の“市場価値”を持つ要件については、プラットフォーム化することよりも、オプション化が適していると言えます。

 これまで説明してきたような一連の分析を行うことで、「売れるはず」という供給側の論理や設計者の“勘”ではなく、事実に基づいた「最低ライン」の判断が可能になります。競合機種の情報が直接入手できない産業機械などにおいても、入手できる限りのデータで分析を行うことは有効です。統計的な手法であるため、データは多い方が精度を高められますが、すべての情報がなくてもそれなりの結果が期待できます。案外、各担当に分散した自社のデータを集める方が大変なのではないでしょうか。

 要件の「最低ライン」が見えたら、いよいよ次回以降はプラットフォームに実装することを考えていきましょう。

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