【対談】―― 光吉俊二×加藤幹之
悔しかったので,博士号を取ってみました
加藤氏 それにしても,光吉さんが乗っているオートバイはすごいですね。
光吉氏 「Boss Hoss」という米国メーカーのオートバイです。以前,加藤さんに会ったときには,8200ccで重さが1トンの車種に乗っていたのですが,今は5700ccの少し小型のものに乗り換えました。それでも,750kgもあるんです。倒れたらきちんと起こせないといけないし,結構大変ですよ(笑)。8200ccの時は日本で日常的に乗っている人が3人ほどしかいなかったようで,米国人からは「東京の道をあのオートバイで走るとはクレイジーだ」と見えたみたいですね。
加藤 あの巨大なオートバイに乗っている強面のお兄さんが,まさかITベンチャーの社長とは…。驚きました。
光吉 STという感情認識技術を核にしたソフトウエア開発を手掛ける企業です。人間の喜怒哀楽などの感情をかなりの精度で認識できると自負しています。
これまでに,5万本売れた「ココロスキャン」というゲーム・ソフトやコールセンターの顧客対応システムなどで応用例がありますし,最近は博報堂などと共同開発したiPhone向けのアプリケーション・ソフトウエア「本音サーチャー」が好評です。先日は,日本のアップル・ストアのエンターテインメント部門で1位になりました。
加藤 それは,すごいですね。どんなアプリですか。
光吉 スマートフォンのマイクに向かって話したことの本音を探り出すアプリです。ST法を使った感情認識を実際に使っています。合コンや宴会で使うことを狙ったアプリです。
演技は,たちどころに見破る
光吉 (iPhoneのアプリを立ち上げて)これです。何か話してみて下さい。
加藤 (マイクに向かって)バカヤロー(笑)。
光吉 分析結果を見てください。怒ったような声で話していただきましたけれど,喜びなどのいろいろな成分が混じっていることが分かりますよね。人間が作為的に演技した声は見破れるんです。プロの声優さんの声でも,演技ならば似たような分析が出ます。もちろん,本当にうれしかったり,悲しかったりする時には,その感情に合わせた分析結果が表示されますよ。
加藤 面白いですね。感情認識とひと口に言っても,実現は簡単ではないと思います。STでは,感情をどうコンピュータに理解させるのですか。