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ベンチャー企業があまり育たない日本は、片翼飛行中で危険です

ザインエレクトロニクス 代表取締役社長 飯塚哲哉氏

丸山正明=技術ジャーナリスト
2010/12/16 00:00
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ザインエレクトロニクスの飯塚哲哉代表取締役社長

 1992年6月に創業したザインエレクトロニクスは、半導体系ベンチャー企業の草分け的存在であり、数少ない成功したベンチャー企業の1社として知られている。同社の特徴は、半導体の企画と設計の工程に機能を集中させる研究開発型企業であり、自社は半導体の生産ラインを持たないファブレス企業である点だ。成功した要因の一つは、半導体製品の供給責任と品質保証に力を注ぐビジネスモデルを確立し、お客様であるクライアント企業から信頼感を勝ち取ったことにある。現在のクライアントは日本、韓国、台湾などの大手電機メーカーや専業メーカーなどであり、同社は国際市場で事業を展開する有力企業になっている。

 1991年5月にザイン・マイクロシステム研究所(茨城県つくば市)を設立し、半導体の設計業務の委託事業を始め、翌年92年6月には韓国の三星電子(現、サムソン電子)との合弁会社としてザインエレクトロニクスを東京都中央区で創業した。97年には、三星電子との合弁形式を発展的に解消し、自社ブランドの半導体製品を手がける“第二の創業”を実施した。同社は大手電機メーカーなどとアライアンスを組み、彼らが求める半導体を迅速に低価格で提供するビジネスモデルを確立した。当時日本の大手電機メーカーが事業化を進めていたLCD(液晶ディスプレー)向けの画像データを高速伝送する半導体製品などをタイムリーに提供するとの戦略を立て、業績を伸ばした。この結果、2001年8月にJASDAQ市場に上場し、株式市場からの資金調達を可能とした。

 同社を率いる飯塚哲哉代表取締役社長は、「上場した一番の成果は、優秀な人材を獲得しやすくなったことだ」という。研究開発型企業にとって人材が一番の資源であるからだ。飯塚社長は、現在の日本は既存の大手企業だけで新産業振興を目指すという、アンバランスな“片翼飛行”を続けている。イノベーションを起こすには、「片翼をベンチャー企業が受け持ち、もう片翼を既存の大手企業が担う両翼による飛行が不可欠だ」と主張する。日本では数少ないベンチャー企業を成功させた起業家である飯塚社長に、事業戦略の立て方などのコツを聞いた。

 1992年にザインエレクトロニクスを創業した時に、飯塚社長は、自分が目指す志(こころざし)を表す言葉として「人資豊燃」という四文字熟語をつくった。この言葉は「優れた“人財”が集まって来てチームを組み、資本や資源を有効に活用して、自分の力の限りに能力を発揮して完全燃焼し、自分が目指すことを実現するという意味だ」と説明する。飯塚さんは「ザインというベンチャー企業は、社員が夢中になって取り組む仕事の場を提供することを一番の使命と考えている」という。

 夢中になって仕事に打ち込む精神状態を、「フロー」という独特の言葉で説明する。一言でいえば「フローとは、夢中になって仕事に打ち込むことで“無我の境地”のような幸福感を感じることを意味する」ようで、ベンチャー企業は「フローを与える場である」という。

 「ザインはIC(Integrated Circuit、半導体の集積回路)の設計業務の請負会社と、よく誤解される」と、飯塚社長は苦笑する。「当社はICの商品企画をタイムリーに提供する事業会社である」と説明し、「お客様であるユーザー企業が求める製品性能や仕様を正しく理解し、求めている製品を素早く提供する事業を展開している」という。同社は、半導体の製造をファウンドリーと呼ばれる生産請負会社に委託する。製品仕様に応じて、最適な生産ラインを持つファウンドリーを選択し、高品質と低価格を両立させる。いうのは簡単だが、実行するのは至難の業であることを実際に実現する事業を展開している。製品によっては「半導体の設計業務を外部の設計専門会社に外注するものまである」という。

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