成熟し、またコストの面で競争力をつけたファンイン(Fan-in)型のウエハー・レベルCSP、いまや携帯電話だけでなく他の種類のウエハー・レベル・パッケージ(WLP)にも応用可能な技術となりつつあるのかもしれない。仏Yole Developpement社の推定では、世界中にあるすべてのICパッケージの6%以上にこの事実が当てはまる。今後十年間でのWLPの成長率は15~20%に達しそうだ。問題は、それがライバル技術よりもコスト面で優位になるか、また携帯電話以外の消費者製品にも広がっていくかということである。

 ベルギーの研究機関であるIMECのdirector of Advanced PackagingであるEric Beyne氏やシンガポールSTATS ChipPAC社のManager of WLCPS business developmentであるTom Strothmann氏によると、ファンイン型は、パッケージの種類とダイのサイズ、入出力端子の数によって選択されるという。そのため、持ち運び用途のために必要となる実装面積とパッケージの高さの制限が、ファンイン型を使う理由の一つになっている。つまり、コスト上の理由というよりは、フォーム・ファクターに関する理由だ。

 現在、フォーム・ファクターに関する用途で、ウエハー・レベルCSPの最大のライバルはQFN(Quad Flat No lead)パッケージである。ウエハー・レベルCSPは入出力端子数が少ないため、小さいダイサイズにおいてコスト優位性を持っている。また、入出力端子数が増加した場合でも、QFNパッケージほどは高価にならない。

 ファンイン型のウエハー・レベルCSPは、量産化によるコスト低減が進む中、すべてのパッケージにおいて毎年採用数を増やしている。しかし、登場から十年が経過した今、価格は横ばいになって来ていて、また競合するパッケージの低価格化も進んでいる。

 さらに、ファンイン型は他のパッケージ技術よりも小さい規模で立ち上げられた技術だ。Strothmann氏は、ファンイン型が携帯機器市場において主要な技術になると期待するが、パッケージサイズがそれほど問題にならない用途においては利用価値があまりないと感じているという。

 米FlipChip International社のCTOであるTed Tessier氏は、製造や後工程でのダイ加工、ウエハー・レベルCSPの表面実装技術としての利用のために整備された業界全体の量産インフラは、ファンイン型の採用や技術者の興味を引くための強力な武器になるという。また、そういったインフラは、ファンイン型が自動車や医療、コンピュータ、デジタル写真といった分野に応用されるためのきっかけになるという。

 ウエハー・レベルCSPは、シリコン系半導体だけではなく、その他の基板やMEMS/SAW/BAWフィルタ、ガリウムヒ素(GaAs)を使用した無線機器にも応用されている。米Texas Instruments社Manager of WCSP and 3D packagingのDavid Stepniak氏は、標準的なウエハー・レベルCSPは最終的なパッケージテストを経ていないため、自動車分野での要求に応えることや、ゼロに近い不良率(DPPM:Defect Part Per Million)を達成することはとても難しいという。また、基板のコストが採用の鍵になるとする。

 Stepniak氏とIMEC社のBeyne氏は共に、初期のファンアウト型ウエハー・レベルCSPがファンイン型よりも重要になると考える。なぜなら、ファンアウト型は、入出力端子の実装面積がチップサイズよりも大きくなるからだ。