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 これまでの10年で半導体消費には大きな変化が起こった。2000年ごろまでの半導体消費の牽引役は,デスクトップ・パソコン(PC)やオフィース・コンピュータ(オフコン),有線通信機器,家電だった。その後にノートPCやデジタル家電,携帯電話が台頭し,半導体消費の中心は企業から家庭や個人に移行した。そして最近は,半導体消費者の人口が増加することによる消費拡大が顕著になってきた。BOP(base of population:年間所得が3000米ドル/年未満の貧困層)の所得が上昇し,新たに半導体消費層になってきたからである。この新たな半導体消費層向けのエレクトロニクス機器は,EMS/ODMが中心となって製造している。半導体消費全体に占めるEMS/ODMの割合は,10年前の8%から現在は32%に急増した。これまでの10年間の変化は,我々の予想をはるかに超えるものだった。このことから,今後10年間で起こる変化も,現在の予想をはるかに超えるものになる可能性は高い。

中国都市部でエアコン,PC,自動車,大型テレビが一気に普及

 10年後を予測するため,少し歴史を振り返ってみたい。

 日本では,1950年代半ばに電気冷蔵庫,電気洗濯機,電気掃除機を「三種の神器」として,1960年代半ばにはカラー・テレビ,クーラー,カー(自家用車)を「3C」として,耐久消費財の普及が進んだ。そして1970年代には,カセットテープ・レコーダ,ステレオ,乗用車,エアコン,電子レンジなどの一般普及製品が出現し,電子機器が大きく普及していった。

 このような普及拡大と並行し,所得上昇に伴う製品の高級化が進み,保有台数も増えていった。1970年代には白黒テレビからカラー・テレビへ移行し,1980年代後半からは冷蔵庫の大型化,冷房のみのクーラーから冷暖房可能なエアコンへの移行,洗濯機の全自動化,テレビの大型画面化などが進んでいった。また耐久消費財の中には,世帯当たり普及率(保有台数を世帯数で割った値)が100%を超える機器が出てきた。例えばカラーテレビは,既に40%近い世帯が3台以上所有している。

 一方,中国都市部では,まず冷蔵庫,洗濯機,カラー・テレビが基本的な耐久消費財として普及していった。これらの普及率は1990年代に概ね上限に達したが,カラー・テレビについては100%を超えて拡大し続けている。また1990年代に入ってクーラーの普及が始まり,1990年代末からは移動電話やPCの普及が急速に進んでいる。これらは,基本的な耐久消費財に対して,より快適な生活を求めた耐久消費財であり,中国の都市社会は,高次の消費社会に突入しつつある証と言えるだろう。

 ここで普及のスピードに注目したい。冷蔵庫,洗濯機,掃除機などの普及が始まってから普及率がピークに達するまでの時間は,日本では約20年だったが,中国都市部は15年である。中国都市部は日本より人口が多いこともあり,普及には時間がかかると考えられていた。しかし,そんなことはなかったようだ。今後10年で,中国都市部で一気に普及することが期待できる機器としては,エアコン,PC,自動車,大型テレビなどが挙げられる。さらに,1980年代の日本で起こった耐久消費財の高級化が,中国都市部でも今後10年で大きく進むだろう。