それでは、本題のプラットフォーム化とはどうなのでしょうか。

 プラットフォームと言う言葉は元々「土台」という意味を持っています。例えばトヨタ自動車では、プリウスとカローラはシャシーの下半分を指す「プラットフォーム」を共有します。その土台の上に、ボディやエンジン、内装を各車種のカラーに合わせて作り込んでいきます。ネジやタイヤ、内装部品など車種間で共有する部品は他にもあります。しかし、自動車ではシャシーを下支えしている車の土台をプラットフォームと呼んでいます。

 しかし、他の製品では自動車のように文字通り下支えしている必要はなく、基礎となる機能を担っている部分を見つけ出し「プラットフォーム」と呼ぶことが必要です。製品の瑣末な要素を共通化したところで、その要素を「プラットフォーム」と呼ぶことに誰しも違和感を覚えることと思います。その違和感には「プラットフォーム」には製品の中核を占めて欲しいという思いが込められていると言っても良いでしょう。それゆえに、「プラットフォーム」には高品質が求められる。つまり、「標準化」が必要なのです。

 また、「プラットフォーム化」には「プラットフォーム」とその他の部分の機能は独立している必要があることにも注意してください。上に乗せる「建物」によって毎回「土台」の強度を変えなくてはならないとしたら、そこには土台部分はあっても確固たる「プラットフォーム」はないと言えるのではないでしょうか。つまり、「モジュール化」が前提です。

 また、当たり前のようですが、複数製品間の「共通化」も必須になります。一つの製品に使われただけだと、プラットフォーム部とそれ以外に分ける必要もないし、どんな分け方をしても恣意的なものになってしまいます。

 つまり、プラットフォーム化によって、メーカーは高品質で低コストな製品を短納期で開発できるようになり、きめ細やかにユーザーに合わせた製品ラインナップを揃えられる余裕ができるのです。

 このように、「標準化」「共通化」「モジュール化」「プラットフォーム化」の目的は明確に違います。また、モジュール化によるコストダウン、あるいは共通化による品質向上など、副次的な効果があることも事を複雑にしています。読者の皆さんの目的は何でしょうか。目的を履き違え、コスト削減のために標準部品リストを作成したり、生産部門と目的を話しあわないまま、部品の共通化を進めて協力が得られなかったり、という経験はありませんか。

 それぞれの用語の共通点は、登場した時代背景に合わせて超えるカベが異なっていることです。「標準化」は部門内の個人間の壁を超え、「共通化」は設計部門を超えて生産とつながり、「モジュール化」は世代や企業の枠を超えます。さらに、「プラットフォーム化」はユーザーのニーズを超え、国の国境を超えるものづくりなのです。作ったら売れる時代は終わり、単にQCDを改善する標準化や共通化、モジュール化だけでなく、ユーザーごとのカスタマイズ能力を持つ製品設計をも兼ねそろえたプラットフォーム化が今、目指すべき方向性なのです。

 次号は開発者や設計者の視点からプラットフォーム化を進める際の落とし穴を見ていきたいと思います。

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