応用分野別のMEMSの市場規模予測(単位:100万ドル)
応用分野別のMEMSの市場規模予測(単位:100万ドル)
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経験が各セクターにおける技術を活用させる

 10年の経験が、成熟したMEMSの製品化までの時間を短縮した。IMT社のFoster氏は、今では新製品が1年で生産できるようになったという。また、複雑な製品は2、3年で生産できるという。ファウンドリが開発時間を短縮するために、(特にパッケージングと統合に関して)プロセス・プラットフォームを開発したからだ。エッチングとボンディング装置の改善によって、生産者は高い歩留まりを短期間で実現できるようになった。

 ファウンドリは1つのセクターでの経験から得た知識を、他分野のデバイスに適用する。このことは生産の効率化を加速すると期待されている。「我々は、生体医学の分野で実現したプロセスの改善を光学の分野に適用しようと努力している。シナジー効果を期待してのことだ。競争の激化によって、我々はもう少しだけ速く前に進まなければならなくなるだろう」とIMT社のFoster氏はいう。

 DALSA社のRobert氏によると、製品を市場に出すまでの時間はICに限っていえば1.5倍から2倍に増えている。また、より多くの製品が大量生産されている。ファウンドリと顧客はマイクロフォンから知識を得て、それを慣性センサーに応用している。その結果、様々な製品におけるフュージョン接合を改善した。

 Tronics社は、開発・認証済みの慣性センサー・プラットフォームの約80%を再利用している。製品を新たな顧客の要求に対応させるまでの期間は1年ほどだ。マイクロ流体工学のような応用分野では、新たなアセンブリやパッケージング、テストの問題があるため、より長い期間を必要とする。

独自の技術モデル

 ファブレスメーカーの米InvenSense社は、自社の成功の要因は低コストの生産技術の開発と大量生産のアウト・ソーシングであるとする。MEMSプロセスの開発、CMOSのデザイン、テスト、キャリブレーションをすべて自社内で行っている。すべてのデザインが一つの製造プラットフォームで処理されている。自社内でのキャリブレーションによって、すべてのジャイロスコープの軸を同時にテストできるようになったため、コストの削減につながっている。

 同社のMEMSプロセスを配備するために600~800万ドルを費やすファウンドリにおいて、そのプロセス・プラットフォームが、従来の8インチのCMOS製造フローに加わる。一つのファウンドリにおいて必要な投資の80~90%が実施されていることに言及したInvenSense社の創始者Steve Nasiri氏は、それが異なった技術プラットフォームでも役に立っていると主張する。つまり、一つの企業が老朽化した製造工場に5000万ドルを投資する必要はないという。

 MEMS企業は洗練されたCMOSのデザインをフル活用し、年間数十億ドルを開発に投資して製造を行うべきなのだ。その方が、いくつもの小規模なMEMS関連の開発に投資するよりもよい。Nasiri氏は、アウトソーシングは、量産にはコストがかかりすぎると主張する。MEMSのファウンドリにプロセスの開発と生産を委託し、CMOSの特定用途向け集積回路に関して他社と提携し、組立工場にパッケージングを依頼すると、(それぞれがマージンを取るため)最終製品の値段が高くなる。その結果、大量生産に向かなくなり、競争力がなくなる。Nasiri氏はMEMSファウンドリは最も低コストのソリューションに特化し、業界に貢献すべきだと主張する。

新興企業にも難題が待ち受ける

 成熟したMEMS技術は新興企業に道をひらくが、製品を効率よく市場に出し、キーとなる差別化要因を自社内で探し出すのは難しい。上位30位以内に入ることに成功したのは、InvenSense社と米Knowles Electronics社のファブレス・モデルだけである。我々の試算では、今後5年間で22億ドルのビジネスが新たなMEMSの応用分野から生まれる。そしてその多くは新興企業から生まれる。

 「しかし、ファブレス・メーカーはファウンドリと協調するために多くの能力を自社で持つ必要がある。彼らは最終製品の市場を知り、適切な商品を確保し、それを顧客に提供しなければならない。最も難しいことは、現実的なビジネスを持った顧客を見つけることだ」。Tronics Microsystems社のGaff氏はこのように結論付けている。