『精度の良い予算とは何ですか?』
『予算策定のポイントは何ですか?』
最近、筆者の元にこの手の問いが多く寄せられる。今回から数回に渡り『予算の本質』について考えていきたい。長年予算策定の現場を見てきたが、予算を作るのは本当に難しい。なぜ難しいか?
「やってみないとわからない。」
難しさは、この一言につきる。結果として発生した原価を算出するのは、(手間を除けば)簡単である。起こったことをしっかり記録すれば良いからだ。これが、予算ともなると話が違う。予算は、コトを起こす前やモノを作る前に、お金を想定し目標を決めるわけである。結果の記録ではなく、想定するというところに難しさがあるのだ。
予算作成は、図1の機種開発のバリューチェーンでいうと、製品企画段階や受注可否判断などの最上流の部分となる。製品企画段階や受注可否判断などでは製品情報は曖昧であり、どんな製品構造になるか? どんな部品構成になるか? どんな設備を使って加工するか? などほとんど決まっていない。よく分からない状況の中で、今回開発する製品はどのくらいのお金がかかりそうか?どの程度にお金を抑えるべきなのか?など、到底わかりようもない。だから、予算を策定するフェーズにおいて、
「設計を進めるうちに、どうせ状況は変わるよね」
「まぁ、やってみないとわからないなぁ」
「あまり時間をかけて検討しても無駄になるだけだしな・・・」
「どうせ100点の予算などないんだから、あれこれ考えるより取り敢えず前に進めよう」
といった、文化が根づいてしまっているのだ。予算は作成しているが、予算を検討していない。トップの承認を通すためだけの、とりあえず予算となっていないだろうか。是非、一度企業の予算策定・検討のプロセスを見返してもらいたい。