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TLOの技術移転事業を構造改革し産学連携を強力に推進中です

関西ティー・エル・オー 坂井貴行取締役

丸山正明=日経BPプロデューサー
2010/11/02 11:00
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関西TLOの坂井貴行取締役

 関西ティー・エル・オー(京都市)は日本の承認TLO(技術移転機関)第一号となった先駆者TLOの一つだ。平成10年(1998年)12月に文部科学省と経済産業省は、同社が提出した技術移転事業計画を承認し、関西TLOは関西圏の広域TLOとして順調に船出した。同社の特徴は、関西圏にある京都大学などの国立大学と立命館大学などの私立大学という複数の大学の研究成果を特許などの知的財産に変換し、その実施権を企業などにライセンスする技術移転事業を広域的に進めることだった。複数大学の知的財産を取り扱うために、大学の外部につくられた同社は広域TLOとして技術移転事業で収益を順調に上げた時期もあった。ところが、平成15年度(2004年度)から始まった文部科学省の知的財産本部整備事業によって、各有力大学が知的財産本部を学内に設けたことで技術移転の前提が変更され、承認TLOの多くは各大学との技術移転事業の役割分担を再構築せざるを得ない厳しい局面に立たされることになった。

 こうした局面の中で、関西TLOは特定の大学と密接な関係を持たない広域TLOであったため、株式会社としての存続を再検討する事態に陥った。この結果、同社は2006年10月に抜本的なリストラを実施する生き残り策を実施した。“経営維新2006”と名付けた技術移転事業の構造改革を推進した立役者は、坂井貴行取締役である。

 営業に特化した技術移転事業を安定して成長させるために、関西TLOが採用したのは“大学共同経営型”TLOへの変身だった。各大学の知的財産本部(名称は各大学で異なる)が自校の教員・研究者の研究成果を特許などの知的財産に権利化したものを、企業などにライセンスするマーケティング業務に特化し、その技術移転によって収益を上げるビジネスモデルである。各大学からは特許などの実施権をライセンスする業務委託を受け、その営業活動に専念する体制に切り替えた。

 現在、国立大学系が学外に関連企業として設けた外部型の承認TLOの多くは厳しい経営状況に陥っている(私立大学が学内に設けた承認TLOの経営状況は原則、非公開なので不明)。こうした状況の中で、関西TLOが実現した経営のV字回復は当然、注目を集めている。そのリストラを断行した中心メンバーの一人である坂井取締役に、日本の大学が進める産学連携の将来像などを聞いた。

 2010年9月29日から3日間、大学見本市「イノベーション・ジャパン2010」〔主催は科学技術振興機構(JST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)〕が東京都千代田区丸の内の東京国際フォーラムで開催され、多くの入場者を集めた。大学や工業高等専門学校などが技術移転したい研究開発成果や知的財産などを展示し、入場者へのアピールを競い合った。

 産学連携を推進する相手企業などを見いだすための出先として、多数並んだ展示ブースの中で、和歌山大学のシステム工学部がものづくりゾーンに出展したブースでは、オレンジ色の派手な法被(はっぴ)を着た女性が熱心に説明していた。関西TLOの和歌山大学担当者として営業活動に励む山本祐子アソシエイトだった。彼女は同社の抜本的リストラの際に正社員として採用された若手社員の一人である。山本アソシエイトは和歌山大学大学院で博士号を取得した研究開発の専門家だったが、「技術移転業務の面白さに引かれて関西TLOへの入社を志願した」という。関西TLOでは、技術移転業務に携わる担当者には“アソシエイト”との肩書きを与えている。

 中堅社員の大西晋嗣アソシエトは、イノベーション・ジャパン2010の展示ブースの間を精力的に動き回った。各展示ブースの中身を見て、関西TLOの技術移転案件と補完関係などが築けそうな展示内容と見いだすと、当該大学の教員・研究者や知的財産本部の担当者などに、関西TLOの技術移転案件を売り込む営業活動に励んだ。「実際に毎年、話がまとまる技術移転案件がいくつかある」という。入社以来、技術移転案件の営業活動にがむしゃらに励んだ結果、「結構やせてダイエットできた」と笑う。

 関西TLOの若手アソシエイトは頑張り屋が多い。京都府立医科大学を担当する島田かおりアソシエイトは「出産直後に、弁理士資格を取った」と、簡単なことのように語る。弁理士資格はそんなに簡単に取得できるものではないとの見方が多数派だろう。関西TLOのアソシエイトとして「知的財産を核とした研究成果事業のプロデュースで成果を上げたい」という。「技術移転のプロになって、日本の産学連携を強力に前進させたい」と続ける。

東京大学TLOを先生役に構造改革を断行

 中堅と若手のアソシエイト集団を“熱闘集団”と自称させて技術移転の営業に邁進させるように仕掛けのは、坂井取締役である。坂井氏はラクビー名門の同志社大学出身のラガーマンだけに、体ががっちりとしたスポーツマンである。このため、外見は参謀タイプにはみえない。しかし、単なる熱意だけで営業する“体育系”ではない。自らは体育系と自称しながら、技術移転事業の営業の勘所をつかみ、そのノウハウを若手のアソシエイトに伝えて、技術移転のプロに成長させる人材育成に余念がない。関西TLOの取締役として自社の技術移転事業が成長するように、戦略・戦術を冷静に練り、実行している“知将”である。

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