大口径ウエハーが材料の供給側に対する圧力に

 2010年の後半に出荷されるMOCVD装置の65%以上が,4インチ以上のウエハーを対象としたものだ。Rubicon社は最近,韓国のLEDメーカーと6インチのウエハーの供給に関して14カ月,7100万米ドルの契約を結んだ。我々の予想では,2インチのウエハーが市場に占める割合は2011年に初めて50%未満になる(表面積換算では45%程度になる)。このことは,材料供給側に対するさらなる圧力となる。なぜなら,大口径ウエハーの方が2インチのウエハーよりも厚みがあるため,表面積あたりの結晶の使用量が大きくなるからである。

 大口径ウエハーはまた,サファイア・メーカーの生産量にも影響を与える。標準的な30kgのKyropoulos法で育てられたサファイア・ブールから切り出すことができる4インチのコアの量は限られている。さらに大きな結晶を作れる企業,異なる軸に沿って結晶を成長させられる企業,またはより優れた形状因子をもつ結晶を作れる企業は,かなり大きな競争力を持つことになるだろう。しかし,サイズの大きな結晶を作るための技術は,そう簡単に習得できるものではない。

図3:サファイア・ブールから切り出すウエハーの形状(仏Yole Developpement社,2010年10月)

大口径化は縦型統合をもたらす

 現在46以上の企業が単結晶サファイア製品を生産している。それらの企業の多くは,バリュー・チェーン全体にはそれほど大きな影響を与えていない。なぜならいくつかの企業は,単にコアや切り取られた(もしくは粗研磨された)ウエハー,ブランクを購入し,電子機器の生産や,光学的な用途に使用される窓ガラスにすぐにでも使用可能なサファイア製品に仕上げるだけだからだ。また,単にサファイア結晶やコア,場合によっては切り取られた,もしくは粗研磨されたウエハーやブランクを生産し,上で述べたような加工業者に売るだけの企業もある。その他の企業は,バリュー・チェーン全体の中で縦型に統合され,加工業者やエンド・ユーザー向けにサファイア製品を供給している。最後に,サファイア製品の加工に携わっている企業は,光学製品などに特化していくかもしれない。

 市場の変化により,サイズの大きな結晶を作れるサファイア・メーカーは,縦型の統合をより進めることになる。現在,2インチや3インチのコアや切り取り済みウエハーの供給者の数は多い。そして,多くはサード・パーティーの加工業者にそれらを供給している。LEDメーカーがより大型のウエハーを利用するようになれば,そういった加工業者はコアやウエハーを確保するのが難しくなるだろう。なぜなら,大口径結晶の生産者が独自の市場を拡大するためにビジネスを自分のグループ内で完結して,生産した基板のエンド・ユーザーとの関係を良好にしようとするからだ。大口径サファイア結晶の市場が小口径結晶の市場に比べて競争が少ない限り,大口径ウエハーの市場は縦型統合した企業にとって魅力のあるものであり続けるだろう。