深刻な材料不足がサファイアの2インチ・ウエハーの価格を30米ドル前半にまで押し上げている。この問題は2011年半ばに解消される見込みではある。

 サファイアとは,赤くない酸化アルミニウム(Al2O3)のことである。不純物を含んだものが昔から宝石として利用されているが,さまざまな光学的,機械的,電気的,熱的また化学的特性を持つため,幅広い用途に用いられる。また,用途の幅は現在も広がり続けている。特に,サファイアを合成的に作ることができる意味は大きい。サファイアの主な用途には,LEDやLED基板がある。

使用量が急増し,材料不足や価格高騰を招く

 LED市場は2010年に未曾有の成長を経験した。それに伴って,青色や白色のGaN系LEDの製造に使用されるサファイア基板の需要も大きく伸びた。基板の完成品に対する需要は,1カ月あたり2インチ換算(TIE)で100万(2009年12月時点)から,200万(2010年第4四半期)まで増加した。

 2009年の第4四半期の時点では,サファイアの加工能力は需要に対してまだ余力があった。つまり,サファイアを加工する企業はまだ需要に付いていくことが可能だった。しかし,材料の供給能力は2009年の終わり頃にはすでに限界に達しつつあった。サファイア製の材料を生産する企業は,そのほとんどが2009年の金融危機や昨年までの強い物価圧力によって資金繰りが苦しくなっていた。さらに,新たな設備の導入・稼動には通常6カ月から1年の期間がかかるため,2010年において生産能力はゆっくりと控えめに上昇しただけで,需要の急増には追いつかなかった。これによって深刻な材料不足が発生し,価格が高騰した。

 サファイヤ製のコアやブランクは,商品から「戦略的な材料」へと変化し,大規模なサファイアの生産者は数年ぶりに価格決定力を取り戻した。また彼らは,利幅を最大にするための価格設定が可能になった。その結果,サファイア・ウエハーの米国内販売価格は我々の予想を超えて30米ドルまで上昇し,現金取引市場においてはそれ以上の価格になった。いくつかのサファイアの仕上げをする企業とLEDメーカーは,今や生産能力を確保するために前払いをし,生産ラインが止まってしまうことを防いでいるのだ。

図1:2インチ・ウエハーの米国内販売価格の推移。横軸の目盛は非線形である(仏Yole Developpement社,2010年10月)

業界の再編