趣旨
3次元CAD導入による設計部門を起点とする改革は、電機メーカーや自動車メーカーといったセットメーカーでは、もはや当たり前。その後に続くのが部品メーカー――というはずだったが、現実には汎用部品メーカーでの3次元化は意外と進展していなかった。日本のものづくりを支える部品メーカーの設計3次元化が進んでいないという事態は、危機に瀕している日本のものづくりにおいて明らかに何とかすべき問題である。
複数企業複数業種で設計3次元化を経験した筆者は、ある有力部品メーカーに入社、その内側から設計3次元化における問題点に直面していく。そこで見えてきたのは、部品メーカーならではの「文化」が改革の妨げになっている、という実態であった。大手メーカーに比べて部品メーカーが遅れているといった単純な認識では、部品メーカーの設計3次元化はまず進められない。まして、大手メーカー用システムの縮小版が部品メーカーに適しているなどとは言えない。
今求められているのは、部品メーカーのビジネスをよく洞察した上での改革方法の確立であろう。
黒河 博人(くろかわ・ひろと)
大学精密機械工学科卒業後,大手電機メーカーに就職。複数の事業部にてメカ機構設計開発を担当し、後に3次元設計化立ち上げプロジェクトの社内リーダとして20~80名を対象に導入プロジェクトを実施。社内における計3回の3次元導入立ち上げ実績を持ち、成功事例の講演、雑誌寄稿などもこなした。 勤務先の分社化を契機にベンチャーの3次元派遣会社に転職。自動車、電機、カメラメーカーなどのセットメーカーで3次元導入コンサルティングを複数回担当し、3次元立ち上げの経験を生かし多くの大口顧客開拓に寄与した。自らも’k designを設立し契約を受託している。近年、部品メーカーにて3次元化プロジェクトを担当する機会があり、そこで3次元化におけるセットメーカーとの本質的な設計文化の違いを体感した。