モーション・センシング技術を利用した各種アプリケーションが、低価格で高機能化した3軸加速度センサや3軸ジャイロスコープ、3軸デジタルコンパスの恩恵を、十分に享受していることは疑いようがない。仏Yole Developpement社がまとめたレポート「Mems for smart phones 2010」では、そういった部品のトータルな市場規模は、昨年、携帯電話機向けだけでも3億米ドルだったが、2015年には12億米ドルにまで成長すると予測している。スマートフォンや携帯電話機向け以外でも、ゲーム機、リモコン、デジタルカメラ、ビデオカメラ、そして多くの消費者向け電子機器が、すでにモーション・センサを内蔵しているか、もしくはすぐに内蔵するようになるだろう。

高機能化と急速な価格下落がカギ

 ビジネスは確かに拡大している。現在、さまざまな電子機器で機能の複雑化が進んでいる状況だ。人物や風景の画像を表示するといった単純な機能から、画像の安定化、GPSなどでユーザーの位置を特定して提供するサービス、高度なゲームといった用途に向けて、さらに複雑な機能が実装されつつある。そういった新機能は、3軸加速度センサと3軸ジャイロスコープ、もしくは3軸ジャイロスコープと3軸デジタルコンパスなどを組み合わせた多軸検出機能を必要とする。

 そういった複雑な機能に対するニーズの高まりを受け、部品メーカーは完全なソリューションを提供する必要がでてきた。単純な機能を持った個別の部品ではなく、「モーション・センシングの機能」を販売する必要があるということだ。現在、消費者向け電子機器メーカーのほどんどが、どうやってそのように複雑な機能を実現したらいいのか分かっていないので、単純な機能を持った個別の部品をソフトウエアやファームウエア、API(Application Programming Interface)と一緒に購入する羽目になっているからだ。

 市場の成長性と同様に、気をつけなくてはならないのが,半年ごとに5%強価格が下落するということが。例えば、2006年に3米ドルだった3軸加速度センサの価格は、今や大量購入時では0.7米ドル以下だ。また、3軸ジャイロスコープは現在2.5米ドル(大量購入時)だが、今後大幅な下落が見込まれている。

 伊仏合弁STMicroelectronics社とドイツBosch Sensortec GmbHは現在、8インチに対応したMEMSデバイス製造施設の恩恵を大いに受けているし、ファブレスメーカーの米InvenSense, Inc.も、製造委託先の企業〔特にカナダDalsa Semiconductor社と台湾Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.(TSMC)〕の所有する6インチと8インチの製造施設の恩恵を受けている。同様の生産インフラを持たずに、これら3社と競合することは、この先非常に難しくなるだろう。6インチの製造施設しかもたない企業は、ライバルたちの所有する8インチの製造施設のコスト優位性にかなわず、今後いずれかの時点で競争力を失うことになるだろう。

では、どの企業が生き残るのか?