【ボストン紀行(3)】米国コンサルと日本のイノベーションについて議論
イノベーションを題材に様々な研究をし、そして多くの書物を書いている米Harvard Business SchoolのClayton M. Christensen教授に「是非お会いしたい」と、何の面識もないのに連絡した。すると、「自分はボストンにいないので、自分が創設したイノベーションに関するコンサルティング会社のメンバーを紹介する」と返事をもらった。
紹介してもらったのは米Harvard Universityで物理学博士号を修得したDavid Duncan氏。イノベーションのモデルについて2時間以上議論させてもらった。本当に貴重な機会がもらえたと思っている。
ビジネス・イノベーションを目指すべき
訪問する前に、私は国家イノベーション戦略を議論したいと連絡していた。先方からいただいた資料にも目を通していたので、議論はいきなり深まった。
いろいろ話した中で印象的だったのは、(1)テクノロジーイノベーションに偏らずビジネスイノベーションを目指すべき、(2)戦略は柔軟に見直さなければならない――の二点である。
彼は、「多くの日本企業はテクノロジー・イノベーションで成功体験が大きく、ビジネス・イノベーションを構築する力をあまり重視してこなかったのではないか」と指摘していた。そして、ビジネス・イノベーションはマーケティングからやテクノロジーだけから生まれるのではなく、新たなビジネスの総合的なアイデアから生まれる。新たなビジネスのアイデアは少数のエッジが利いた人間から生まれるが、日本企業にはそれを促す機能が少ないのではないか、と言っていた。
また、「硬直的な戦略は戦略とは言わない」との指摘があった。多くの企業が決めた戦略をなかなか変更できずに多くの投資ロスを生み出しており、戦略を柔軟に変更できれば多くの投資の無駄をなくすことができるというのだ。具体的にどうするかというとマーケティング、設計、製造など複数の部門の連携、これらの現場情報のリアルな収集と分析、そして戦略へのフィードバックが必要ということ。このノウハウが彼のコンサルの一番の肝だそうで、具体的な深い説明は残念ながらもらえなかった。
私は、彼の話を聴きながら「科学技術の5カ年計画などは逆にマイナスを生んでいるのではないか」と思った。わが国の政府はあまりも柔軟性がない。そこに5年計画を作り、金科玉条のように進める。5カ年計画などは法律で決まっており、この点は改革する必要がある。
政府は新しいパラダイムの下でイノベーションの環境を整備すべき
また、彼は「イノベーションを進めるは技術、つまり研究開発だけではない」と強調していた。以下の図は、Clayton M. Christensen教授の著書“Innovation Overseas: Using Theory to Assess Corporate and Country Strategies” のchapter nine“INNOVATION OVERSEAS:海外のイノベーション”に書かれた図表である。この図にあるように「破壊的なイノベーションを進めるためには、研究開発だけでなく、製品市場、人材市場、資本市場、インフラ(電力、物流など)、産業のダイナミクスなどが必要である」との指摘である。

私もわが国のイノベーションの議論は研究開発の議論に偏重していると思っていたので、この創造的破壊とも言えるイノベーション推進の要素はなかなか的を射ていると思う。
先日、アメリカのイノベーションの研究者と話をしたが、彼は「税制や補助金といった既存のイノベーション促進政策をいくらやってもほとんど効果はない。日本のイノベーションのパラダイムをどのように再構築するかというゴールを定め、それに向けて政策を集中しなければならない」と指摘していた。
新しいパラダイムの下のイノベーション政策をなんとしても創り、実現していきたい。
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