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「全体最適」の視点をどう持つ--東京大学教授の横山明彦氏に「日本版スマートグリッド」を聞く

藤堂安人=日経BPクリーンテック研究所
2010/08/31 16:00
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 スマートグリッドやスマートコミュニティの実証プロジェクトが全世界で一斉にスタートした。しかし,各国,各地域ごとに解決すべき課題が違うために,各プロジェクトの目的も多様で,全体像を理解することは容易ではない。日本は自国の課題解決のために今後どのようなスマートグリッドを開発し,それをどのように海外展開していくべきなのか。ここでは,「日本版スマートグリッド」の基盤技術の確立を目的とする「次世代送配電系統最適制御技術実証事業」(2010年から3年間)のプロジェクトリーダーであり,『スマートグリッド』(日本電気業界新聞部,2010年3月)の著者である東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻教授の横山明彦氏に,「日本版スマートグリッド」が目指す方向を聞いた。

--「日本版スマートグリッド」をどう定義されていますか。

東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻教授の横山明彦氏
東京大学大学院新領域創成科学研究科先端エネルギー工学専攻教授の横山明彦氏

 日本政府が家庭向けに太陽光発電を導入する施策をとっていることから,今後電力系統に,制御不能な電力が大量に流れ込む可能性があります。1000万kWくらいならなんとかなっても,2800万kW,さらには5300万kWと増えていくと,現状のままでは系統側に発生する電圧上昇や余剰電力,周波数変動などの問題を現状の系統側だけの制御では対処できなくなってきます。そこで,系統側と需要側の両面でその問題を解決しようとするのが「日本版スマートグリッド」です。そのために,上流の発電所と各家庭の太陽光発電などのすべての発電設備を協調制御すると共に,需要側の機器に直接働きかけて統合的に制御するシステムの構築が必要です。

--このほど始まった「次世代送配電系統最適制御技術実証事業」が「日本版スマートグリッド」実現への第一歩ですか。

 「次世代送配電系統最適制御技術実証事業」では,東京大学の柏キャンパス内に3kWの太陽光発電システムを3台,ヒートポンプ給湯器を3台、電気自動車を1台導入し,電力制御手法の開発,その効果の検証を行います。これまで,こうした需要側機器の制御にまで踏み込んだ実証は例がありません。電気自動車は単に充電するだけでなく,充電量までコントロールしますし,できれば放電制御もまで踏み込みたいと思っています。ヒートポンプ給湯器では,温度制御ではなく出力制御を行ってよりきめ細かく制御します。一方で,上流の原子力発電所や火力発電所の運用も含めて,系統と家庭をひっくるめて全体を最適に制御します。まず実際にこうした一体制御をできるかどうかを1軒の実データを基に検討して,次に数十万件や数百万件レベルのシミュレーションを行って,日本版スーマットグリッド実現の基礎データにしたいと思います。さらに将来的には,まだ決定はしていませんが,プロジェクト終了後にどこかの地域で実証実験を行う可能性もあります。

--スマートグリッド関連の実証プロジェクトとしては,「次世代エネルギー・社会システム実証」もあって,「日本型スマートグリッドを含めた次世代エネルギー・社会システムの実現のために実証事業を行う」とうたっています。どのような違いがあるのでしょうか。

 「次世代エネルギー・社会システム実証」の方は,スマートグリッドの技術検証というよりはスマートコミュニティやスマートシティをどう構築するかに力点が置かれています。目的としては,日本の技術を世界市場で売るために,今日本企業が保有する技術を組み合わせてどのような社会が実現するかを示すプロジェクトという意味合いが強いと理解しています。これに対して,私がリーダーを務める「次世代送配電系統最適制御技術実証事業」では,2800万kWという太陽光発電が2020年までに導入されるという直面するわが国の問題に対して,技術的にどうするのか,という具体的な検討を行います。現在の技術を組み合わせるのではなく,前にも述べたように今までやられてこなかった需要側の細かい制御や上流の系統電源との一体制御に踏み込んだ,まったく新しい将来の技術を開発するプロジェクトです。

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