ディスプレー パネルの製造装置・部品から応用先までカバー
 

暗い映像の3Dテレビは“省エネ”に逆行する製品か?(後編)

久保 翼
2010/08/06 14:00
印刷用ページ

 前編では,3次元(3D)テレビでは映像が暗くなることについて,シャープの講演や韓国LG Display Co., Ltd.の展示などの事例に基づいて,できる限り定量的に議論した。これを踏まえて,後編では,本題であるテレビの省エネと3Dテレビについて議論していく。

 前編で述べたとおり,3Dテレビの映像が暗くなる要因の一つに,シャッター・メガネの影響がある。シャッター・メガネに使われている偏光板によって,光の透過率が落ちてしまう。前編では触れなかったが,3Dテレビの種類によって,シャッター・メガネに必要な偏光板の枚数が1枚だったり2枚だったりする。当然1枚の方が透過率の低下は小さいが,その一方で視聴環境に大きな制約があったりする。今回の後編では,こうした事情について最初に解説する。そして,本題であるテレビの省エネと3Dテレビについて議論していく。

2枚の偏光板が必要なPDP,液晶は1枚で済むが視聴姿勢に制約

 PDPの場合,パネルから放出される光は本質的に自然光であり,偏光ではない。従って,メガネにシャッター機能を持たせるためには2枚の偏光板が必要である。メガネ側で自然光を偏光に変えなければ,液晶シャッターは機能しない。この変換によって,メガネの液晶に入る光が半減以下になってしまう。さらに,偏光板2枚分の透過率ロス(1枚当たりおよそ9割)が発生する。従って,前編で紹介した東芝モバイルディスプレイ(TMD)の3Dメガネ用OCB液晶パネルの透過率が33%であることも,合点がいくのである。シャッター・メガネの透過率は低くなるが,有利な点もある。首を傾けても,それなりの3D映像を見ることができる。

 一方,液晶の場合,パネルから放出される光は既に偏光されている。従って,メガネの偏光板の偏光軸さえ合わせれば,メガネのパネル側の偏光板は無くてもよい。偏光板が1枚で済むことから,メガネの透過率は本質的には1枚の偏光板の透過率(およそ9割)でほぼ決まる。しかし,このメガネは透過率の点では若干有利だが,弱点もある。液晶パネルの偏光軸にメガネの偏光軸を合わせなければならないということは,言い換えれば,首を厳密には1度たりとも傾けてはならない。傾けるにつれてクロストークが増えるだろう。シャープの3D液晶テレビLC-LV3シリーズ取扱説明書には「3Dメガネは,両目を水平に近い状態で視聴する(ページ19)」という注意が記載されている。

 ところで,PDPテレビで3D映像を見ていると,照明用の「蛍光灯」の光がフリッカー(ちらつき)となって目に飛び込んでくる。さして気にならないこともあれば,気になる時もある。これも,シャッター・メガネのなせる技である。シャッターはPDPの画面から放出される自然光に同期して開閉しているが,50Hzあるいは60Hzで明暗を繰り返している蛍光灯の自然光に対してもシャッターが機能してしまう。明暗の周期の2倍,あるいは4倍の周期がシャッターの開閉周期に近い。これがフリッカーを引き起こす。例えれば,60Hz駆動の液晶パネルのバックライトを61Hzで点滅させるようなものである。一方,偏光板1枚方式のメガネは自然光に対してはシャッター作用が小さく,フリッカーを感じにくい。

 3D PDPテレビを見るときに気になるフリッカーを避けるためには,視聴環境の照明を,いわゆるインバータを使った蛍光灯照明や,流行のLED照明に取り替えるか,旧来の白熱ランプに戻すか,あるいは消灯するしかない。

液晶シャッター・メガネで見る3D映像は暗くなる

 上述のように,シャッター・メガネに使われる偏光板が1枚か2枚かによって,3Dテレビの体感明るさは変わる。ただ,いずれにしても,これに片眼視による“体感明るさの半減”が加わる。2次元(2D)テレビの映像に比べて3Dテレビの明るさは半減以下になる。

 公表ベースで数値化すれば,シャープの3Dテレビの明るさは2Dテレビの18%である(前編で紹介した同社 松本雅史氏の講演内容から換算)。韓国LG Display Co., Ltd.の液晶パネルとシャッター・メガネを組み合わせた3Dテレビの明るさは65nit編集部注)といえる(前編で紹介した同社のSID 2010での展示内容から)。TMDのOCB液晶パネルのシャッター・メガネを着用すれば,明るさは2Dテレビの17%になる(透過率33%に,片眼視による体感明るさ半減を考慮)。

編集部注)テレビの明るさや輝度の単位表記には通常SI単位系の「cd/m2」を使用しているが,本稿では前編の韓国LG Display Co., Ltd.の説明文との統一性を考慮して「nit」を使用する。1nit=1cd/m2である。

ここから先は日経テクノロジーオンライン会員の方のみ、お読みいただけます。
・会員登録済みの方は、左下の「ログイン」ボタンをクリックしてログイン完了後にご参照ください。
・会員登録がお済みでない方は、右下の会員登録ボタンをクリックして、会員登録を完了させてからご参照ください。会員登録は無料です。

【9月18日(金)開催】高精細映像時代に向けた圧縮符号化技術の使いこなし方
~H.265/HEVCの基礎から拡張・応用技術とその活用における心得~


本セミナーでは高品質、高信頼、高効率に製品化するために標準化された高圧縮符号化技術、H.265/HEVCについて、その基盤となった符号化技術の進展から映像・製品特性に適切に圧縮符号化技術を使いこなす上で知っておきたい基本とH.265/HEVCの標準化、実装、製品化に向けた基礎及び拡張技術の理解と活用の勘所等について詳解します。詳細は、こちら
会場:中央大学駿河台記念館 (東京・御茶ノ水)

マイページ

マイページのご利用には日経テクノロジーオンラインの会員登録が必要です。

マイページでは記事のクリッピング(ブックマーク)、登録したキーワードを含む新着記事の表示(Myキーワード)、登録した連載の新着記事表示(連載ウォッチ)が利用できます。

協力メディア&
関連サイト

  • 日経エレクトロニクス
  • 日経ものづくり
  • 日経Automotive
  • 日経デジタルヘルス
  • メガソーラービジネス
  • 明日をつむぐテクノロジー
  • 新・公民連携最前線
  • 技術者塾

Follow Us

  • Facebook
  • Twitter
  • RSS

お薦めトピック

日経テクノロジーオンラインSpecial

記事ランキング